忙しいのに利益が残らない小規模製造業会社が利益体質になるには
「現場は常にフル稼働。休む間もなく受注もあるし、出荷もしている。なのに、決算書を開いてみると利益がほとんど残っていない」
こんな悩みを抱える中小製造業の経営者は少なくありません。日々の忙しさが充実感につながらず、むしろ疲弊感となって蓄積している。そんな状況はとても苦しいのではないでしょうか。
忙しいのに利益が出ない背景には、目に見えない「落とし穴」が潜んでいます。本稿では、多くの会社が陥りがちな「利益を失うポイント」を深掘りしながら、どのようにして高収益体質の企業へと変革できるのかを考えていきます。
目次
低単価案件に時間を奪われる構造的な問題
まず最初に見直すべきは「案件ごとの収益性」です。忙しさに追われる会社の多くは、採算の合わない低単価案件に過度に時間を取られています。
たとえば、短納期・小ロット・多品種の受注が重なっている場合、製造ラインの段取り替えや管理の手間が膨大になります。売上としては計上されるものの、実際のところ作業コストに見合わないケースが少なくありません。
もちろん、段取り替えや管理の手間の費用が見積に入っていれば問題ありませんが、過去の慣例からそのような費用は見積に入っていないことの方が多いかもしれません。
「得意先だから断れない」「設備が遊ぶくらいなら小さい案件でも受けよう」という判断が続くと、結果として低採算の案件が増え、利益を押し下げる悪循環に陥ります。
この問題を解決するには、以下のような対応が有効です。
・案件ごとに採算管理を徹底する
・粗利率の低い案件は受注基準を見直す
・価格交渉を行い受注単価を引き上げる
・低単価案件は数量条件や納期条件を見直し、採算ラインを引き直す
原価計算の曖昧さが利益を食いつぶす
次に着目すべきは「見積もり精度」です。
中小製造業では、現場の経験や勘に頼った見積もりが少なくありません。しかし、実際には見積もり以上に手間がかかったり、材料費が高騰していたりと、当初の想定を大きく上回るコストが発生していることがしばしばです。
特に間接的な費用や人件費は「見えない原価」です。工数計算が甘いと、実際には時間がかかっていても見積もりには反映されず、利益率を圧迫します。段取り替え、手仕上げ、微調整、検査、梱包などの時間は見積りに反映されていないことが多いのではないでしょうか。
この問題を解決するには、以下のような対応が有効です。
・原価積算のルールを見直す(確立する)
・実際の作業時間や材料使用量を記録する
・見積時に収益シミュレーションを行い利益を明確にする
生産工程上のムダが利益を奪う
深刻なのは、日々の製造業務に潜む「見えないムダ」です。
代表的な例として、次のようなものが挙げられます。
– 段取り替え頻度が高すぎる
– 機械の稼働率が低い
– 作業ミスや不良の発生で手戻りが頻発する
こうしたムダは、決算書だけでは見えません。日常業務の中に埋もれているからこそ、気づきにポイントです。
この問題を解決するには、以下のような対応が有効です。
・工程ごとの時間管理・稼働状況を「見える化」する
・ 段取り作業を標準化・効率化する
・ミス防止の仕組みを取り入れ、手戻りを削減する
・ 小ロット多品種の生産戦略を再構築する
収益性の「見える化」が利益体質の第一歩
「忙しいのに利益が残らない」状態は、偶然ではなく必然です。低単価案件の偏重、甘い原価計算、現場に潜むムダ。この3つが積み重なることで、会社は知らず知らずのうちに利益を失っています。
解決の鍵は、「経営と現場をつなぐ見える化」です。現場の数字をリアルタイムで把握し、案件ごとの採算を見極め、ムダなコストを削減する仕組みを整えましょう。
これにより、忙しさがそのまま利益につながる「高収益体質」を実現できます。
決して「忙しいこと」そのものが悪いわけではありません。正しい受注選別と効率的な生産体制を構築すれば、忙しさはそのまま利益に転換できる武器となります。
まずは、「どこで利益を失っているのか?」を明確にすることから始めてみてはいかがでしょうか。
FactoryAdvanceは「収益向上サイクル」の確立をサポートします

FactoryAdvanceは、小規模製造業が「収益向上サイクル」を確立して、高収益体質を実現するための仕組みを取り入れた生産管理システムです。見積精度の向上、収益性と生産状況の可視化、予定と実績の比較レポートなどの機能により、「収益向上サイクル」の確立をサポートします。
投稿者プロフィール

- 株式会社イーポート代表取締役 ITコーディネーター/キャッシュフローコーチ
- FactoryAdvanceの開発販売を通して製造業の収益改善・DX推進に貢献したいと思っております。中小製造業の企業価値を高めるプラットフォーム「FACTORY SEARCH」の運営も行っています。プロフィールはこちら
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