製造業で製品別・顧客別採算管理をするには
会社経営において、「利益が出ているかどうか」は最も関心の高いテーマのひとつです。しかし、売上や粗利だけを見ていても、本当に儲かっている(付加価値が高い)製品や顧客を正確に把握することはできません。
そのために重要なのが、「製品別」「顧客別」の採算管理です。この記事では、製造業における実践的な採算管理の方法を解説します。
なぜ「製品別・顧客別」で採算を見る必要があるのか?
多くの町工場や中小製造業では、月次の損益計算書(P/L)を見て経営判断をしています。しかしこの方法では、役員報酬が高い、交際費が高い、外注費が多い、材料費が高いといった事しかわらかず、採算管理に本当に必要な以下のような課題が見えてきません。
- A製品は利益が出ているが、B製品は赤字になっている
- 売上は多いが、A社向けの取引は利益が少ない
- 手間がかかる割に儲からない製品がある
こうした実態を見える化することで、「どの製品・顧客に力を入れるべきか」「値上げ交渉や製品ラインナップの見直しが必要か」など、打ち手が明確になります。
採算管理のステップ
1. 【区分設定】製品・顧客ごとの分類を明確にする
まずは、採算を把握したい単位(製品、製品群、顧客、得意先グループ、案件、案件群など)を定義します。どの集計をすればいいかをざっくりと決めていきます。財務会計ではないので、正確性を求めすぎると前に進まないので、将来見直しを前提に区分設定をすればいいと思います。
ポイント
- 製品は同種の製品群に分ける(多少の違いはあっても〇〇装置は同種の製品群にするなど)
- 案件は似た様な種別に分ける(ざっくりわけるなら部品製造、据付工事などの単位でいいかもしれません)
2. 【直接原価の集計】材料費・外注費・労務費などの直接コストを記録する
次に、製品ごと・顧客ごとに、実際にかかったコストを集計します。
- 材料費:製品1個あたりの単価 × 使用量
- 外注費:協力会社への加工依頼コスト
- 労務費:社内での作業時間 × 作業者のアワーレート
- 設備費:加工等かかる作業時間 x 設備のアワーレート
ポイントは、材料費や外注加工費といった外部支払い費用と社内の労務費を明確にすることです。
材料費や外注加工費はわかりやすいですが、労務費は作業時間の記録が必要です。また、労務費の計算で使う作業者のアワーレート、設備に使う設備のアワーレートについては、決算書や製造原価報告書の数値を参考に、会社の収益構造から導き出す必要があります。場合によっては部門ごとの収益構造を整理する必要も出てきます。
アワーレートの計算方法に関しては、無料レポート「中小製造業向け値上げ交渉に繋がる見積積算方法」をご参照ください。
3. 【間接費の按分】共通経費を適切に配分する
工場全体で発生する間接費(管理部門人件費、光熱費、設備減価償却など)は、何らかの基準で分配(按分)する必要があります。
以下のような按分方法が知られています。
- 間接費レートで按分
- 生産量や売上高で按分
- 作業時間で按分 など
ここでは「合理性」が求められます。すべてを精密に割り振る必要はありません。むしろ、正確・精密に按分するために労力がかかり過ぎる事は費用対効果が悪いためおすすめできません。しかしながら、「納得感」のある一定のルールを決めて運用することが必要です。
4. 【利益の見える化】製品別・顧客別の収益構造を一覧にする
製品名 | 売上 | 材料費 | 外注費 | 経費 | 粗利 | 労務費 | 備費 | 利益 |
A製品 | 5,000,000円 | 500,000円 | 500,000円 | 100,000円 | 3,900,000円 | 500,000円 | 100,000円 | 3,3000,000円 |
B製品 | 3,000,000円 | 500,000円 | 500,000円 | 100,000円 | 1,900,000円 | 1,000,000円 | 1,000,000円 | ▲100,000円 |
FactoryAdvanceでは、以下ような画面で収益性の一覧を表示しています。

採算管理ができると、経営が変わる
製品別・顧客別の採算が見えると、以下のような戦略的判断が可能になります:
- 赤字製品の見直しや価格改定
- 収益性の高い顧客への営業強化
- 受注の優先順位の見直し
- 原価改善のターゲットを絞った活動
つまり、「なんとなく忙しいが、儲かっているか不明」という状態から脱却し、利益を生み出す経営の土台ができます。
まとめ
製造業における採算管理は、単なる数字合わせではありません。製品ごと・顧客ごとの収益性を把握することで、限られた経営資源をどこに集中すべきかが明確になります。
まずは、できる範囲からで構いません。「主要製品3つだけ」「主要取引先5社だけ」など、小さく始めてみましょう。
定期的にミーティングを行ない見直しを継続していくことで、利益体質の会社へと変わることができます。
投稿者プロフィール

- 代表/ITコーディネーター
- システム開発と製造業のDX推進、製造業の企業価値を高めるプラットフォーム/ファクトリーサーチの運営を中心に、東京と名古屋を拠点に活動しています。プロフィールはこちら
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