専用機械メーカーの収益管理|赤字案件をなくす原価と進捗の見える化
一品一様の専用機を設計・製作し、現地で据付工事まで行う中小製造業にとって、収益管理は経営の生命線です。
しかし、個別案件ごとに工数や費用が異なり、設計変更や現場トラブルの影響を受けやすいこの業態では、受注時点では黒字と思っていた案件が、納品時には赤字に転落していた……という事例も少なくありません。
本記事では、専用機メーカーや据付工事業者が安定的な利益を確保するために必要な「収益管理のポイント」を解説します。
目次
なぜ収益管理が難しいのか?業態特有の構造的な課題
専用機製作や据付工事のメーカーは、いわゆる「個別受注生産」が基本であり、製品は毎回オーダーメイド。そのため、以下のような課題が発生しやすくなります。
・案件ごとに見積基準や原価構造が異なる
・受注後の仕様変更が頻発し、工数や費用が変動する
・進捗や出来高が見えづらく、赤字に気づくのが遅れる
・現場での突発対応が多く、原価管理が後追いになりがち
つまり、受注時に想定した実行予算通りになることは少なく、実績原価を見える化し、いかに実行予算に近づけるかが収益性のカギになります。
収益管理の基本は「工番管理」と実行予算の徹底
収益を管理するためには、まず案件ごとに【工番】を設定し、工番単位での予実管理を行う体制が必要です。
そして、以下の事に注意して、工番単位で決めた実行予算内に収まるように徹底します。
【実行予算の策定】
受注段階での見積金額に対し、材料費・外注費・自社工数・据付経費などを見積もって予算化
【実績の記録】
実際に発生したコストを工番ごとに日報・仕入・支払で記録
【進捗の可視化】
現場からの報告や工事工程をタイムリーに反映
【差異分析】
見積と実績の差を常に把握し、原価のブレを早期に把握
これにより、赤字傾向の案件を機械の製作及び工事中に察知でき、手を打つことが可能になります。
よくある赤字化の原因
専用機製作・据付工事業では、以下のようなパターンで赤字案件になる可能性があります。
・設計段階での仕様追加が見積に反映されず、工数だけ増加
・現場工事中のイレギュラー対応が非課金対応で処理される
・協力会社の追加費用が事後精算になり、利益を圧迫
・設計・製造・据付の各工程で部門間の連携が不十分
これらを防ぐためには、プロジェクト全体を一元的に管理する案件管理システムや、工程と原価を連携させた仕組みが必要です。
デジタルツールによる収益管理の実践ステップ
見積作成から原価管理などの業務をデジタル化することで、原価を見える化することができます。
また、業務効率化も進むので生産性を向上させることが可能です。
デジタル化する場合には、以下のステップで行います。
① 工番別管理を前提としたシステム導入(クラウド型推奨)
② 案件別の原価構造を見積段階で定義(工数内訳や外注費含む)
③ 日報や進捗を現場からモバイルで入力できる体制づくり
④ 工程別の出来高と実績原価を連動し、利益の予実差を見える化
⑤ 設計変更やイレギュラー費用も即時反映し、顧客との合意を記録
デジタル化しクラウドシステムなどで見える化することにより、経営者・営業・設計・製造・現場管理が一体となった収益管理が可能になります。
利益改善の鍵は「収益の見える化」と「早期発見」
赤字案件の多くは、納品が終わったあとで初めて赤字だったと判明します。
しかしそれでは対策が打てません。
重要なのは、今どの工番が危険かをリアルタイムで把握し、「仕様変更分の請求交渉」、「現場作業の削減提案」「設計工数の再配分」といった対策を早期に打つことです。
そのためにも、設計・購買・製造・現場・経理の情報が「工番」という単位で一元化されていることが前提となります。
まとめ|個別受注生産企業では収益管理の仕組みが大事
専用機製作や据付工事といった「個別性の高い製造業」では、標準品メーカー以上に収益管理が重要になります。
収益を可視化するには、案件単位での実行予算と原価記録、そして進捗連動の差異分析という3つの軸が不可欠です。
属人化や部門間分断を解消するには、クラウド型の収益管理システムの導入が効果的です。
赤字案件を未然に防ぎ、確実に利益を積み上げていく、その第一歩として、収益管理の仕組みづくりを始めてみてはいかがでしょうか。
投稿者プロフィール

- 株式会社イーポート代表取締役 ITコーディネーター/キャッシュフローコーチ
- FactoryAdvanceの開発販売を通して製造業の収益改善・DX推進に貢献したいと思っております。中小製造業の企業価値を高めるプラットフォーム「FACTORY SEARCH」の運営も行っています。プロフィールはこちら
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