Factory Advance

AI-OCRの便利な活用方法と情報漏洩対策

製造業の事務所には、毎日のように紙やPDFの帳票が届きます。お客様からの注文書、図面、工程票、展示会で集めた名刺。社内でも、作業報告書(日報)が紙のまま回っている会社は少なくありません。そして多くの場合、それを人がシステムに打ち直しています。

「FactoryAdvance(ファクトリーアドバンス)」の AI-OCR は、こうした帳票をAI(Google の Gemini)に読ませて、人は確認と直しだけにする機能です。この記事では、まず AI-OCR を使える場面をご紹介します。

あわせて、よくいただくご質問「AIに読ませた注文書や図面が、AIの学習に使われるのでは?」にもお答えします。答えは「Google の AI の学習には使われません」です。後半では、その根拠を Google の規約の文言でお示しします。

AI-OCRを使える場面

帳票AIが読む内容読んだあと
お客様からの注文書注文番号、発注元、納入期日、納入場所、明細(品番・品名・数量・単位・単価)、小計・消費税・合計案件と受注明細を登録
図面図面番号・改訂などの表題欄、部品表(型番・数量・材質)、寸法・加工の指示図面マスタに登録して案件にひも付け。似た過去の見積を探す入口にも
作業報告書(日報)作業日、作業者、作業の開始・終了時刻、作業時間、作業内容、どの製品のどの工程か作業日報に取り込み、工程の実績時間や原価の集計に活用
名刺会社名、氏名、役職、部署、メール、電話、住所見込客(営業リスト)に登録
工程票(例)品番、品名、数量、材質、工程の順番と種類、段取時間・加工時間品番ごとの工程テンプレートに登録

お客様からの注文書

取引先ごとに書式がばらばらでも、項目の位置を一つずつ覚えさせる設定は要りません。読み取った結果は、左に原本、右に読み取った値が並ぶ画面で確認できます。人が見比べて「案件登録」を押すまで登録されないので、読み違いがそのままシステムに入ることはありません。納期が空欄などの抜けは、警告でお知らせします。

図面

表題欄と部品表を読み取って、図面マスタに登録します。登録した図面からは、似た品物の過去の見積・受注を探せます。「似た品物をいくらで出したか」から見積を始められるので、見積作成の時間も短くなります。

作業報告書(日報)

現場で手書きしている日報を読み取って、作業時間と作業内容を取り込みます。タブレットやスマホでの入力に切り替えにくい現場でも、紙の運用はそのままで、実績のデータを集められます。

名刺

展示会で集めた名刺を、スマホでその場で撮影するだけ。一度に20枚まで読み取れます。裏面の住所も読み、すでに取引のある会社なら候補としてお知らせします。

例えば、お客様の帳票に合わせた追加も

読み取る帳票は、お客様の業務に合わせて増やせます。例えば、取引先から注文書・図面と一緒に工程票が届くお客様には、工程票の読み取りを追加しました。工程の記号を自社の工程マスタと照らし合わせ、品番ごとの標準工程として保存します。次からの受注や見積では、その工程をそのまま展開できます。

また、注文書・図面・工程票がセットで届くお客様には、まとめてスキャンしてメールで送るだけの仕組みも用意しました。AIがページごとに帳票の種類を見分けて、それぞれの取り込み画面に振り分けます。発注元の会社名から取引先も自動で判定します。

どの帳票にも共通する考え方

  • AIは「読む係」、決めるのは人。AIが読んだ結果は確認画面で止まり、人がボタンを押して初めて登録されます。
  • 手入力が「見比べて直す」に変わる。入力作業はゼロにはなりませんが、打ち込む量と打ち間違いが減ります。
  • 社外の帳票にも、社内の帳票にも使える。取引先から届く注文書や図面だけでなく、日報のように社内で紙のまま回っている帳票も対象です。
  • 書式ごとの設定が要らない。帳票ごとにテンプレートを作る従来型のOCRと違い、初めて見る書式でも読み取れます。

読ませたデータは、Google の AI の学習に使われません

ここからは、データの扱いについてです。FactoryAdvance が Gemini を呼び出しているのは、Google Cloud の Vertex AI という、企業のシステム向けの有料サービスです。Google Cloud の「サービス固有規約」には、「学習の制限(Training Restriction)」という条項があり、次のように定められています。

Google will not use Customer Data to train or fine-tune any AI/ML models without Customer’s prior permission or instruction.

(当社訳)Google は、お客様の事前の許可または指示なく、お客様のデータを AI・機械学習モデルの学習や微調整に使いません。

Google Cloud Platform Service Specific Terms「Training Restriction」(出典1)

この制限は、Vertex AI で提供されるすべての Google のモデルに適用されます。Google のドキュメントには、正式版のモデルにも、正式版になる前のモデルにも適用されることが明記されています(出典2)。文章や画像を読む Gemini も、検索のためにデータを数値に置き換えるモデル(埋め込みモデル)も、その対象です。

「無料の Gemini」とは、適用される規約が違います

「Gemini にデータを送ると学習に使われる」という話を耳にすることがあります。これは多くの場合、開発者向けの無料サービス(Google AI Studio や Gemini API の無料枠)の規約を指しています。その規約には、確かに次のように書かれています。

When you use Unpaid Services, including, for example, Google AI Studio and the unpaid quota on Gemini API, Google uses the content you submit to the Services and any generated responses to provide, improve, and develop Google products and services and machine learning technologies

(当社訳)Google AI Studio や Gemini API の無料枠などの無料サービスを使う場合、Google は送信された内容と生成された応答を、Google の製品・サービスや機械学習技術の提供・改善・開発に使います。

Gemini API Additional Terms of Service「Unpaid Services」(出典3)

同じ規約には、無料サービスでは人が入力と出力を読むことがあるため、機密情報や個人情報を送らないように、という注意書きもあります。

FactoryAdvance は、この無料サービスを使っていません。Google Cloud 上の当社専用の環境から、サーバー同士の認証を通して Vertex AI を呼び出しています。そのため適用されるのは、先ほどの Google Cloud 側の規約です。

無料の Gemini(AI Studio・無料枠)FactoryAdvance(Vertex AI)
学習・製品改善への利用ありなし(規約で制限)
人による内容の確認あり得る原則なし(下記の不正利用の監視を除く)
適用される規約Gemini API 追加利用規約Google Cloud の利用規約とデータ処理契約
処理する場所選べない東京リージョンに固定

学習以外で、データが一時的に残る場面

正確にお伝えするために、データが一時的に残る場面もご説明します。どちらも学習には使われず、東京リージョンの中にとどまります。

  • 応答を速くするためのキャッシュ:送ったデータと応答を、最長24時間、メモリ上にだけ保持します(ディスクには書き込みません)。用途はサービスの性能改善だけに限られます(出典2)。
  • 不正利用の監視:自動の安全フィルタが規約違反の疑いを検知した場合に限り、Google が確認のために送信内容を最長90日保存することがあります。このデータも学習や微調整には使わないと明記されています(出典4)。注文書や図面の読み取りで検知されることは考えにくい仕組みです。

FactoryAdvance 側で行っていること

  • 国内で処理:AIの呼び出し先を東京リージョンに固定しています。大きなファイルを渡すための一時置き場も東京にあり、24時間で自動的に削除されます。小さなファイルは一時置き場を通さずに直接送るため、どこにも残りません。
  • 当社専用の環境から呼び出し:個人のアカウントや無料枠ではなく、Google Cloud 上の当社専用の環境から、サーバー同士の認証で呼び出しています。
  • 送るのは必要な分だけ:例えば注文書の読み取りなら、送るのは帳票1枚と読み取りの指示だけです。お客様のデータベースをまるごと渡すことはありません。
  • 原本はシステムに保管:アップロードした帳票の原本は FactoryAdvance の中に保管し、読み取った結果といつでも見比べられます。

まとめ

  • 注文書・図面・作業報告書・名刺など、紙やPDFの帳票は、AI-OCR で「打ち込む」作業から「見比べて直す」作業に変えられます。お客様の帳票に合わせて、読み取る帳票を増やすこともできます。
  • 登録するかどうかは、必ず人が確認してから決めます。
  • 読ませたデータは、Google の AI の学習や微調整には使われません。Google Cloud の規約に明記されています。
  • 「学習に使われる」のは無料サービスの話で、FactoryAdvance は使っていません。処理は東京リージョンで行います。

注文書・図面・作業報告書など、お手元の帳票をAIがどう読むか、デモでお見せできます。お気軽にお問い合わせください。

出典

いずれも2026年10月9日に閲覧した内容です。規約は改定されることがあるため、最新の内容は各ページでご確認ください。引用の日本語は当社による参考訳で、英語の原文が正となります。

出典1 Google Cloud Platform Service Specific Terms「Training Restriction」
https://cloud.google.com/terms/service-terms

出典2 Google Cloud ドキュメント「Gemini Enterprise Agent Platform and zero data retention」(Training restriction / In-memory data caching の節)
https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/resources/zero-data-retention

出典3 Gemini API Additional Terms of Service「Unpaid Services」
https://ai.google.dev/gemini-api/terms

出典4 Google Cloud ドキュメント「Abuse monitoring」
https://docs.cloud.google.com/gemini-enterprise-agent-platform/models/abuse-monitoring

出典5 Google Cloud Data Processing Addendum(データ処理契約)
https://cloud.google.com/terms/data-processing-addendum