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設備の稼働状況を見える化する方法|ラズパイと後付けセンサーで古い機械から始める

「あの機械は今日、どれくらい止まっていたのか」。作業日報を見返しても、答えははっきりしません。通信機能のない古い機械が多く、メーカーの稼働監視システムは高くて手が出ない。多品種少量の町工場では、こうした状況がごく普通です。

古い機械でも、外から電流や信号灯の点灯を読めば稼働状況は取れます。ラズパイ(Raspberry Pi)と後付けセンサーを使えば、機材費はおおむね5〜10万円で、設備1台から試せます。ただし、データを集めるだけでは利益は増えません。止まっていた理由を記録し、その仕事の見積と実績のずれまで追えるようにして、はじめて改善の材料になります。

ラズパイとセンサーで生産性が上がった公開事例、稼働状況の取り方、構成と費用の目安、そして稼働データを案件ごとの利益につなげる考え方まで、順に整理します。

設備の稼働状況を見える化する目的は「どこで、なぜ止まっているか」を知ること

設備の稼働状況の見える化というと、稼働率のグラフを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし多品種少量の現場では、全設備の稼働率を一律に上げることが目的になりにくいのが実情です。品種ごとに段取りが変わり、受注の波もあるため、稼働率の数字だけを追うと、売れない物を作って在庫を積む方向に進んでしまいます。

大事なのは、次の2つを知ることです。

  • 納期を左右する設備が、どこで、どれだけ止まっているか
  • 止まっている理由が何か(材料待ち、段取り、検査待ち、故障、人がいない、など)

ここで気をつけたいのは、「電源が入っている」「加工している」「良品が完成した」は、それぞれ別の状態だということです。電源が入っていても空回りしているだけかもしれません。加工していても、その品物が後工程で不良になれば価値は生みません。稼働状況を取るときは、どの状態を「動いている」とみなすかを最初に決めておく必要があります。

稼働率の考え方や、稼働率から隠れた損失を見つける方法は、製造業の設備稼働率を見える化して隠れ損失を見つける方法で詳しく扱っています。ここからは、その数字を「どうやって古い機械から取るか」に絞って進めます。

ラズパイとセンサーで生産性が上がる仕組み|公開事例から分かること

センサーで分かるのは、設備が「いつ、どれだけ止まっていたか」です。生産性が上がるのは、その記録を見て、生産計画や段取り、保全、作業のやり方を変えたときです。公開されている事例をたどると、次の流れで成果につながっています。

稼働の記録が生産性の向上につながる流れ
稼働と停止を自動で記録する
▶
止まった時間帯と理由が分かる
▶
計画・段取り・保全・作業手順を変える
▶
空いた時間で受注を社内でこなせる
▶
時間あたりの付加価値が増える

ラズパイや安価なセンサーを使った国内の公開事例を、生産性が上がった道筋ごとに整理すると次のようになります。

ラズパイ・後付けセンサーで生産性が上がった公開事例
事例 測ったもの 変えたこと 効果
プラスチック成形の町工場(成形機9台) 成形機の動力モーターの電流 計画を日単位から時間単位へ。段取りを昼にまとめる 稼働率 約60%→約80%、外注加工費率 約9%→約4%
レース生地メーカー 編み機の停止時間と回数 見つかった部品の不良を交換し、停止時の点検手順を改める 停止回数が大きく減り、稼働率が向上
配電盤・制御盤メーカー 工作機械の稼働状況と新人の作業予定 時間がかかっていた段取りと事前確認を新人が見直す 1か月で新人の生産性が2.5倍
端末線メーカー 自社製装置の作業数(リードセンサー) 生産記録を自動で作る 数日かかった月次集計が1日1回の操作で完了
漢方薬メーカー 包装機の使用電力 生産が終わったらすぐ電源を切る 電力コストを削減
自動車部品メーカー(約480名) ラインの稼働・停止時間、生産個数、サイクルタイム 毎日、停止の要因と対策を話し合う会議を開く 切削ラインの出来高69%向上、設備投資を累計3億3,000万円削減

夜間の「チョコ停」が見えて、稼働率が60%から80%に

千葉県のプラスチック成形加工の町工場は、射出成形機9台を24時間の交代勤務で動かしていました。受注は安定しているのに利益が残らない。支援に入った中小企業診断士が、ラズパイに電流センサーをつないだ仕組みを作り、成形機の動力モーターの電流から稼働状況を記録しました。9台への導入にかかった総費用は約110万円です。機械メーカーの稼働監視ソフトは1台あたり約150万円で、しかもメーカーごとにしか使えなかったと紹介されています。

記録を見て分かったことは3つありました。夜間はフル生産のつもりが、細かな停止(チョコ停)がとても多かったこと。生産計画が日単位で、小ロットの品物が早く終わると次の準備がなく手が空いていたこと。段取り替えが社長のいる時間にしかできず、待ちが生まれていたことです。

そこで、生産計画を時間単位に細かくし、空き時間に別の品物を入れるようにしました。段取り替えは昼にまとめ、品質が安定してから夜勤に引き継ぎます。明け方に生産が終わるように組み、金型の交換に合わせて昼勤と交代します。導入の翌月には、稼働率が約60%から約80%に上がりました。

注目したいのは、その先の変化です。社内で作り切れる量が増えたことで、外注加工費率が約9%から約4%に下がりました。外に出していた仕事を社内に取り戻せば、売上から材料費と外注費を引いた付加価値が増えます。稼働率の向上が、そのまま利益の増加につながった例です。

停止の原因を突き止めて、止まる回数を減らす

レース生地メーカーは、編み機の停止時間と回数を記録しました。すると、不具合の調整による停止が目立つことが分かり、定期点検では見つけられなかった、わずか8.1mmのスプリングの不良が見つかりました。部品を交換して根本から直し、止まったときの点検手順も改めて全員に共有した結果、停止の回数が大きく減り、稼働率が上がりました。

止まった回数と時刻が残っていれば、「たまに止まる」が「この部品が原因で、この頻度で止まる」に変わります。保全の手を打つ場所がはっきりします。

作業と設備の動きを重ねて、段取りのムダを見つける

配電盤・制御盤メーカーは、工作機械の稼働状況と、新人の作業予定を重ね合わせました。すると、事前の段取りと、難しい曲げ加工の前の確認に時間がかかっていることが分かりました。新人が自分の作業を見直し、知識とコツを身につけた結果、わずか1か月で新人の生産性が2.5倍になったと報告されています。

設備のデータだけでは「止まっていた」としか分かりません。人の作業と重ねることで、「誰の、どの作業で時間がかかったか」まで見えるようになります。

集計の手間とエネルギーのムダを減らす

端末線メーカーは、自社で作った製造装置にリードセンサーを付け、作業の数を自動で数えるようにしました。日々の生産記録が自動で作られるようになり、担当者が数日かけていた月次の生産分析レポートが、1日1回の操作で作れるようになりました。

漢方薬メーカーは、包装に使うヒートシール機の電力を測りました。電源が入っている時間に比べて、実際に機械が動いている時間が短く、作業の前後も電源を入れたままだったことが分かりました。生産が終わったらすぐに電源を切るよう徹底し、電力コストを減らしています。

設備を買い足さずに、出来高を増やす

規模は町工場より大きくなりますが、従業員約480名の自動車部品メーカーの例も参考になります。ラズパイを使って必要なセンサーを自作し、古い設備を含む生産ラインの稼働時間と停止時間、生産個数、サイクルタイムを記録しました。毎日、停止の要因と対策を話し合う会議を開いて改善を続けた結果、切削ラインの出来高は69%上がり、設備投資は累計で3億3,000万円減らせたと紹介されています。

今ある設備でもっと作れるようになれば、新しい設備を買わずに済みます。設備を増やす前に、今の設備の時間をどれだけ付加価値に変えられているかを確かめる考え方は、時間あたり付加価値で設備投資の効果を測る方法でも扱っています。

なお、これらは2017年から2021年にかけて公開された事例で、導入した企業や支援者による報告です。機器や価格は当時のものなので、そのまま今の購入リストにはできません。ほかの工場で同じ成果が出ることを保証するものでもありません。

成果が出た工場に共通すること|測るだけでは生産性は上がらない

反対の例もあります。国内の繊維機器などのメーカーは、電流センサーとラズパイで、信号灯のない古い機械も含めて稼働データを取れるようにしました。ただし公開された資料では、データを集めるところまでで、分析と改善は今後の課題とされていました。データを取ることと、生産性が上がることの間には、もう1段の取り組みが要ります。

成果が出た事例には、次の共通点があります。

  • 止まった理由を話し合う場を毎日持っている:自動車部品メーカーは毎日、停止の要因と対策を話し合う会議を開いた。成形の町工場も、社長と工場長、支援者でデータを見ながら改善計画を練った
  • 何を良くしたいかを先に決めている:成形の町工場は、IoTを入れる前に2年かけて業務を見直し、稼働率を追う指標として決め、社員とも課題を共有していた
  • やり方を変える権限のある人がデータを見ている:生産計画を時間単位にする、段取りを昼に寄せる、といった変更は、計画を決める人がデータを見て初めてできる
  • 空いた時間の使い道がある:止まる時間が減っても、作るものがなければ付加価値は増えない。成形の町工場では、外注していた仕事を社内に戻す先があった

最後の点は特に大事です。工場全体のペースを決めている設備の停止が減れば、その分だけ工場全体で作れる量が増えます。一方で、もともと余裕のある設備の稼働率を上げても、仕掛品が増えるだけで売上は増えません。どの設備の、どの停止を減らすかを選ぶことが、生産性の向上への近道です。

小さく始めて効果を確かめる進め方そのものは、IoT導入の効果とスモールスタートのメリットでも整理しています。

設備の稼働状況の取り方は4通り|信号灯・電流・接点信号・設備の通信機能

古い機械から稼働状況を取る方法は、大きく4つに分かれます。設備の年式や制御盤の状態によって、取れる方法が変わります。

稼働状況の取り方の比較
取り方 利点 限界・確認すること
信号灯を外から読む 制御盤への配線を避けられる場合がある 外の光、汚れ、点滅、色の意味が設備ごとに違う
電流を測る 通信機能のない古い設備にも使える 電源ON・空回り・加工中の区別は実測で確かめる
接点・制御信号を読む 運転中や加工完了を比較的はっきり取れる 図面、絶縁、接続の仕様、メーカーへの確認が要る
設備の通信機能を使う アラームなど細かい情報まで取れる 年式、オプション、ライセンスの有無で使えないことがある

最も手軽なのは、信号灯の点灯を光センサーで外から読む方法です。制御盤を開けずに済むことが多い反面、周りの照明や汚れで誤検知が起きます。緑・黄・赤の意味も設備ごとに違うため、点灯パターンと実際の状態を一度見比べてから使います。

信号灯のない古い機械では、主電源や主軸モーターの電線に、挟むだけの電流センサーを付ける方法がよく使われます。電流の大きさで「止まっている」「待機中」「加工中」を分けるので、しきい値は実際の加工を見ながら決めます。

運転中や加工完了の信号を制御盤から取り出せれば、最も確実です。ただし制御盤の中での作業になるため、図面と仕様を確認し、設備の条件を理解した担当者が施工します。比較的新しい工作機械なら、メーカーが用意する通信機能(工作機械の共通規格に対応したものなど)で、アラームや運転モードまで取れる場合があります。

稼働・停止以外にも、後付けセンサーで取れる情報はあります。

  • 生産数:光電センサーや近接センサー、加工完了の信号で数える。空運転、再加工、1回で複数個を取る加工の扱いを決めておく
  • 品質条件:温湿度、液温、熱電対、圧力を記録する。測る位置、精度、校正の要否を確かめる
  • エア・電力:流量、圧力、電力を測る。電流だけでは正確な電力量は分からない。電圧や力率も関係するので、電気代の削減を評価するなら電力計を使う
  • 故障の兆候・画像検査:振動、温度、カメラを使う。加工条件や撮影条件が変わったときの扱いが難しいため、最初の一歩には向かない

ラズパイを使った構成|設備の動きを「仕事の実績」に変える

ラズパイを使う場合の基本構成は、次の流れになります。

ラズパイで稼働状況を集める構成
設備・センサー(信号灯、電流、接点信号)
▶
絶縁入力装置・変換装置で安全な電圧に変える
▶
ラズパイで状態を判定し、一時保存する
▶
QRコードで案件・工程を読み、停止理由を入力する
▶
生産管理で案件別の実績・進捗として見る

この構成の要は、ラズパイが「センサーの値を集める箱」だけでなく、設備の動きと業務の情報を結び付ける場所になることです。作業を始めるときに案件・工程のQRコードを読み、止まったら理由をボタンで選ぶ。これで「どの仕事で、なぜ止まったか」まで記録できます。

ラズパイの試作機。ケースに収めたラズパイの入出力端子からブレッドボードへ配線している

写真は、当社で試作しているラズパイの試験機です。冷却ファン付きのケースに収めたラズパイの入出力端子から、色分けした線でブレッドボードへ配線し、部品をつないで動作を確かめています。机の上で動きを確かめる試作の段階なので、工場の設備につなぐときは、後で触れる絶縁入力装置などを間に入れて、信号の電圧を合わせます。

機種は役割で選びます。

  • Raspberry Pi 4/5:複数のセンサーの集約、画面表示、ほかのシステムとの連携に向く。Linux が動く小型のパソコンとして使える
  • Raspberry Pi Pico 2:小さなマイコン。センサーの読み取りや計数に向く。パソコン型のラズパイとは別物なので、画面表示や連携は苦手

設備ごとに高性能なラズパイを置く必要はありません。1台で複数の設備を集約すれば安くなりますが、その1台が壊れたときに止まる範囲は広がります。設置場所が油や切粉、振動の多い環境なら、24V電源に対応した産業用のゲートウェイ機器を選ぶ方法もあります。設備の制御装置からすでに情報が取れるなら、まずそちらを調べます。

データを集めるソフトには、画面上で処理の流れを組める Node-RED がよく使われます。ラズパイで動かす手順や自動起動の方法は公式に案内されていますが、選んだ機器や追加部品で動くかは別に確かめます。

接続では、電圧の違いに注意します。ラズパイの入出力端子は3.3Vで動くため、工場でよく使われる24Vの信号をそのままつなぐと壊れます。必ず、対応する絶縁入力装置を間に入れます。

止まったときと通信が切れたときの扱いも、最初に決めておきます。

  • 通信が切れたとき:ラズパイに一時保存し、回線が戻ってから送り直す。データに識別番号を付け、二重に数えないようにする
  • 状態が分からないとき:「加工中」「停止」「異常」とは別に「データ不明」を表示する。通信断を設備の停止と取り違えないためです
  • 停電と故障:記録装置をSSDにしただけでは停電対策は終わりません。保存容量の上限と、予備機への交換手順を用意します

安全とネットワークの扱いも外せません。最初の導入は監視と記録に限り、非常停止や安全インターロックは既存の安全装置のまま維持します。ラズパイの管理画面をインターネットに直接公開せず、設備のネットワークにつなぐ範囲も絞ります。工場のシステムでは、情報を守ることに加えて、設備の稼働と人の安全を守ることが求められます。

どこから始めるか|「設備1台+案件QR+停止理由」が最初の一歩

最初から全設備に付けると、費用も手間もかさみ、データを見る人も追いつきません。始めやすい順に並べると、次のようになります。

  1. 稼働・停止の自動記録:どこで、どれだけ止まっているかを知る
  2. 案件・工程とのひも付け:見積時間と実績がどれだけ違うかを知る
  3. 停止の通知・生産数の集計:巡回や日報の入力を減らせるかを確かめる
  4. 品質条件・省エネ・状態監視:記録から具体的な改善につながるかを確かめる

対象にする1台は、納期を左右している設備を選びます。受注が集中して順番待ちが起きる機械、段取りが長くて後工程を待たせる機械です。工場全体のペースはこの設備で決まるため、ここが1時間止まれば、工場全体の出来高が1時間分減ります。

1台を選んだら、案件・工程のQRコードと、停止理由の入力をセットで用意します。停止理由は「材料待ち」「段取り」「検査待ち」「故障」「人がいない」「その他」程度の少ない選択肢にし、ボタン1つで押せるようにします。選択肢が多いと、現場は「その他」ばかり押すようになります。

費用の目安|機材は設備1台あたり5〜10万円から

設備1台で簡単な稼働監視を試す場合、機材費はおおむね5〜10万円を見込んでおきます。

設備1台で試す場合の機材費の目安
項目 予算の目安
ラズパイ本体(Raspberry Pi 5/4GB) 約2.3万円
電源・記録装置・冷却 0.8〜1.8万円
センサー・絶縁入力装置・変換装置 1〜4万円
ケース・配線・取り付け部材 0.5〜2万円
機材の合計 約5〜10万円

ラズパイ本体の価格は、2026年10月時点の国内の販売ページの税込価格(22,990円)です。そのほかは機器を選ぶ前の概算で、実際の価格は購入時に確かめてください。

この表には、制御盤の工事、ソフトの開発、表示用のモニター、停電対策の無停電電源、通信、センサーの校正の費用は入っていません。振動による故障の兆候の把握や画像検査は、別の予算になります。

見落としやすいのが、社内の工数です。たとえば構築に40時間かかり、社内の時間単価を5,000円とすると、機材とは別に20万円分の工数を使っています。台数が増えて保守の手間が大きくなる段階では、メーカーの稼働監視システムも含めて考えます。

稼働データを案件の利益につなげる

稼働状況の見える化で最後に効いてくるのは、設備の動きを「どの案件の、どの工程の時間だったか」と結び付けることです。多品種少量の現場では、全設備の稼働率よりも、案件ごとの時間のずれのほうが利益に直結します。

記録しておきたい情報は、次のとおりです。

  • 設備の番号、時刻、状態、データの品質(稼働・停止・通信断を見分ける)
  • 案件・明細・工程(どの仕事の実績かを特定する)
  • 作業の開始と終了、段取りの区間(段取りと加工の時間を比べる)
  • 生産数、良品数、不良数(加工完了と検査結果を分ける)
  • 停止理由と、手で直した履歴(改善の対象と、データの修正を追う)

ここで、機械が動いていた時間と、作業者が働いた作業時間は分けて管理します。1人で2台を受け持つ現場では、機械の時間と人の時間が一致しないためです。

これらがそろうと、たとえば次のことが見えてきます。

  • 見積で置いた加工時間と、実際の加工時間のずれ
  • 材料待ちや検査待ちで止まっていた時間
  • 夜間に止まったまま、朝まで放置されていた時間

作業日報を「作業記録」から「利益データ」に変える考え方と同じく、時間の記録は案件の利益とつながって初めて経営の判断材料になります。

個別受注生産型の中小製造業向けの案件管理クラウド「Factory Advance」では、作業指示書に印刷したQRコードをスマホで読み取り、工程ごとの作業の開始と終了を記録できます。見積で置いた時間と実績を案件ごとに比べられるので、設備の稼働記録と同じ案件・工程の単位で突き合わせれば、「どの仕事で、なぜ時間がずれたか」を見つけやすくなります。QR付きの作業指示書から実績入力までの流れは、工程管理の機能紹介で紹介しています。見積試算、実績登録、差異分析、改善というサイクルを回し、時間あたり付加価値を高めることが Factory Advance の考え方です。

まとめ

設備の稼働状況の見える化は、高価なシステムを入れなくても、ラズパイと後付けセンサーで設備1台から始められます。要点は次の3つです。

  1. 生産性が上がるのは、記録を見て計画・段取り・保全・作業のやり方を変えたとき。公開事例では稼働率が約60%から約80%に上がり、外注していた仕事を社内に戻せた例もある
  2. 測るだけでは変わらない。止まった理由を話し合う場と、空いた時間の使い道を先に用意する
  3. 「納期を左右する設備1台+案件QR+停止理由」から始め、稼働の記録を案件ごとの見積と実績のずれにつなげる

今日からできる一手は、納期の遅れにいちばん関わっている設備を1台決め、その設備が昨日止まっていた時間と理由を、現場の担当者に聞いて書き出してみることです。理由が3つ以上すぐに出てくるなら、その設備が最初の候補です。

稼働の記録を案件ごとの実績と見積のずれにつなげ、利益の改善まで回す仕組みは、Factory Advance の製品紹介資料にまとめています。

→ Factory Advance の製品紹介資料をダウンロードする

参考文献

中小製造業の予知保全 始め方|振動温度監視

「主力機械が突然止まり、納期遅延と緊急修理費で大きな損失が出た」。多くの中小製造業がこうした経験を持ちながら、保全はいまだに「壊れたら直す」事後保全のままです。一方で、振動センサーや温度センサーが安価になり、データに基づいて故障の兆候を捉える予知保全は、20名規模の町工場でも手の届く取り組みになりつつあります。本記事では、何から始めればよいのか、どこに投資すべきかを、具体的な数値と手順で整理します。

設備の突発故障が中小製造業の利益を削っている現状

中小製造業の設備保全は、長らく「事後保全(壊れてから直す)」と「時間基準保全(決まった周期で部品交換)」の2軸で運営されてきました。しかしどちらにも明確な弱点があります。

事後保全は、計画停止ではないため緊急対応の人件費・特急部品調達費・納期遅延による信用低下が発生します。専用機械や老朽設備を抱える工場ほど、ひとたび故障が起きると工程全体が止まり、波及損失が見積もり以上に膨らみます。

時間基準保全は安全側に倒した運用ですが、まだ使える部品まで交換するため過剰コストになりがちです。逆に、想定外の使用条件で寿命前に故障することも防げません。

2025年版ものづくり白書でも、設備の老朽化と保全人材の高齢化は中小製造業の構造課題として繰り返し指摘されています。ベテランが「音が変わった」「振動が大きい」と気づいて未然に防いでいた判断を、データで補完する仕組みが必要になっています。

事後保全・時間基準保全・予知保全の違い
従来の保全(事後・時間基準) 予知保全(状態基準)
故障してから対応 or 定期的に部品交換 ▶ センサーデータで劣化を検知してから対応
突発停止リスクが高い / 過剰交換でコスト増 ▶ 計画的に停止できる / 必要なときだけ交換
ベテランの勘と経験に依存 ▶ 数値データで誰でも判断可能
故障時の損失は工程全体に波及 ▶ 兆候段階で対応するため被害を最小化

予知保全で何が変わるのか — スループット視点で考える

予知保全のメリットを「修理費が減る」だけで捉えると、投資判断を誤ります。中小製造業にとって本当に重要なのは、付加価値(スループット = 売上 − 材料費 − 外注費)が増えるかどうかです。

たとえばボトルネック工程の設備が1日止まると、その日に予定していた案件の出荷が遅れます。ボトルネックで失われた1時間は工場全体で1時間の付加価値損失に直結するため、損失額は単純な修理費ではなく「その日に稼げたはずの粗利」で測る必要があります。

仮にボトルネック工程の時間あたり付加価値が8,000円だとすると、突発故障で8時間止まれば6.4万円の機会損失。年に3回起これば約20万円の損失です。これに緊急修理費や残業代を加えると、年間50〜100万円の隠れた損失になっているケースは珍しくありません。

予知保全はこの「ボトルネックでの突発停止」を減らすことに最大の価値があります。逆に、ボトルネックでない工程の保全強化は付加価値増には直結しにくいため、投資の優先順位は明確に決まります。

何から始めるか — 振動・温度を起点にしたスモールスタート

予知保全と聞くと大規模な投資を想像しがちですが、中小製造業が始めるべきは「対象設備を絞った振動・温度監視」です。

Step1: 監視対象設備を1〜2台に絞る

すべての設備を一斉にIoT化するのは現実的ではありません。次の基準で対象を絞ります。

予知保全の対象設備を選ぶ判断基準
優先度 判定基準 具体例
★★★ 最優先 ボトルネック工程かつ過去に突発故障歴あり 主力NC旋盤、熱処理炉、専用機
★★ 高 代替設備がなく止まると工程全体が停止 唯一の大型加工機、外段取り不可の設備
★ 中 高額部品(ベアリング・モーター)の寿命管理が難しい 古いコンプレッサー、ポンプ
対象外 予備機がある・故障しても他工程で吸収可能 汎用工作機械の2号機以降

Step2: 振動と温度のセンサーで状態を取る

回転体(モーター・ベアリング・ポンプ・主軸)を持つ設備では、振動と温度の変化が劣化の最も早い兆候として現れます。

  • 振動センサー: 加速度センサーで取得した波形をFFT解析し、ベアリング異常・アンバランス・芯ずれを検知
  • 温度センサー: モーター表面や軸受部に取り付け、平常時との差分で異常加熱を検知
  • 電流センサー: 制御盤に後付けで設置でき、負荷変動から異常を捉える

近年は1台あたり数万円〜十数万円のワイヤレス振動センサーが入手可能で、スマートフォンやPCで波形を確認できる製品も増えています。初期投資は1設備あたり10〜30万円程度から始められる現実的なレンジに収まります。

Step3: 1〜2か月の「正常データ」を取る

センサーを付けてすぐ異常検知ができるわけではありません。最低でも1〜2か月、平常運転時のデータを蓄積して「この設備にとっての正常範囲」を把握します。

このときに重要なのは、稼働状態(加工中・アイドル・段取り中)、加工条件(主軸回転数・送り)を併記すること。加工条件が変われば振動値も変わるため、条件抜きで「閾値○○以上で警報」と決めると誤報だらけになります。

中小製造業の予知保全 導入5ステップ
対象設備を1〜2台に絞る(ボトルネック優先)
▶
振動・温度センサーを設置し計測を開始
▶
1〜2か月の正常データを蓄積して基準値を作る
▶
閾値超過時のアラート運用ルールを定める
▶
蓄積データから部品交換タイミングを最適化する

Step4: アラートと対応ルールを決める

データを取るだけでは予知保全になりません。「振動値が基準の1.5倍を超えたら担当者に通知 → 翌週末の計画停止で点検 → 部品手配」といった対応フローを決めて初めて意味を持ちます。

通知はメール・LINE・専用アプリなど、現場が確実に気づく手段を選びます。「気づいたら誰が判断するか」「どの段階で部品発注するか」を事前に決めておくことで、属人的な対応から脱却できます。

Step5: 蓄積データを部品交換タイミングと見積に反映する

1年以上データが蓄積すると、「この設備のベアリングは振動値が○○を超えてから平均△か月で故障する」といった経験則が定量化されます。これにより時間基準保全の周期も見直せ、過剰交換が減ります。

さらに重要なのは、得られた稼働実績データを設備費チャージレートの根拠に使えることです。年間操業時間と稼働率が実測値で把握できれば、見積の信頼性が大きく向上します。

投資判断は「会社全体で考える」 — 個別ROIで判断しない

センサー1台あたり10〜30万円という投資を、その設備単体の修理費削減効果だけで判断するのは危険です。

ボトルネック工程に投資した場合、防げた突発停止1回が工場全体の付加価値増につながります。逆に、ボトルネックでない設備にいくらセンサーを付けても、ボトルネックがそのままなら工場全体の付加価値は増えません。

投資の判断軸を整理すると次の通りです。

予知保全投資の判断軸(年間効果の試算例)
評価項目 計算式 試算例
突発停止削減による機会損失回避 年間停止時間 × 時間あたり付加価値 16時間 × 8,000円 = 12.8万円
緊急修理費・特急部品代の削減 緊急対応1回あたりコスト × 回数 10万円 × 年2回 = 20万円
過剰部品交換の削減 時間基準で交換していた部品の延命 年5万円〜
残業代削減 緊急対応の残業時間 × 単価 年3〜10万円
合計効果(目安) — 年40〜50万円
初期投資 センサー+設置+設定 1台あたり10〜30万円

この試算はあくまで一例で、実際の効果は設備の重要度・稼働状況・現在の故障頻度に大きく左右されます。重要なのは「会社全体の付加価値がいくら増えるか」で投資判断を行うことです。

補助金とパートナー選びで導入ハードルを下げる

2026年時点では、中小製造業のIoT・デジタル化に対する補助金制度がいくつか整備されています。デジタル・AI導入補助金などを活用すれば、センサー機器・クラウド利用料・導入支援費の一部を補助対象にできる可能性があります。最新の公募要領は中小企業庁・経済産業省の公式情報で確認してください。

導入パートナーを選ぶ際は、センサーメーカーやITベンダー単独ではなく、現場の改善活動を伴走してくれる支援者(ITコーディネーター、中小企業診断士など)と組むことをおすすめします。データが取れても、それを保全業務や見積に反映する仕組みづくりまで踏み込まないと、投資効果は限定的になります。

予知保全で得られる稼働データは、生産管理システムと連携することでさらに価値が高まります。「いつ、どの設備で、何時間動いて、どの案件を作っていたか」を統合的に把握できれば、案件別の収益管理にもつながります。クラウド型生産管理システムFactory Advanceは、個別受注生産の中小製造業向けに、案件単位の見積・実績・収益を一元管理する仕組みを提供しています。IoTで取得した稼働実績を案件別収益と紐付けたい方は、システム詳細もご覧ください。

なお、関連する取り組みとしてIoT導入の効果とスモールスタートのメリット、製造業の設備稼働率を見える化|隠れ損失の発見、製造業の設備投資 判断基準|時間あたり付加価値で投資ROIを測る方法もあわせて参考にしてください。

まとめ

中小製造業の予知保全は、もはや大企業だけの取り組みではありません。振動・温度センサーが安価になり、ボトルネック工程の主力1〜2台に絞れば、現実的な投資額でスモールスタートできます。

押さえるべきポイントは次の3つです。

  1. 対象設備はボトルネック工程に絞る。会社全体の付加価値増に直結する設備を最優先する
  2. 1〜2か月の正常データを取り、稼働条件とセットで基準値を作る。閾値だけの運用は誤報を生む
  3. 投資判断は個別設備の修理費削減ではなく、工場全体のスループット増で評価する

事後保全のままでは、突発停止のたびに利益が削られ続けます。一方で、すべての設備に一斉投資するのも非合理的です。「最も止まってほしくない設備はどれか」を一度社内で議論することから、予知保全への第一歩を踏み出してみてください。

参考文献

製造業の設備稼働率を見える化|隠れ損失の発見

「うちの工場、機械はいつも動いているように見えるのに、なぜか利益が残らない」。多くの中小製造業の経営者・工場長から聞かれる悩みです。実際に設備の稼働状況を客観データで測ってみると、思っていたよりも止まっている時間が長く、そこに大きな損失が眠っているケースが少なくありません。本記事では、設備稼働率を見える化することで隠れた損失を表面化し、利益改善につなげる進め方を解説します。

なぜ「動いているように見える」のに利益が出ないのか

工場長が現場を歩いて回ると、機械はおおむね稼働音を立てています。作業者も忙しそうに立ち働いています。しかし月次の決算が出てみると、想定していた利益に届かない。この構図の背後には、肉眼では捉えきれない短時間の停止や非付加価値時間が積み重なっています。

経済産業省「2025年版ものづくり白書」では、中小製造業のデジタル化の遅れと、その結果として現場データを経営判断に活かせていない状況が繰り返し指摘されています。とりわけ設備の稼働状況については、「人の感覚」と「実データ」の間に大きな差があることが報告されています。

感覚値と実データの典型的な乖離
項目 現場の感覚 実データの傾向
設備稼働率 80〜90%は動いている 実測すると50〜60%程度
段取り替え時間 1回30分くらい 実測で45〜60分
チョコ停発生頻度 たまにある程度 1直あたり10〜20回
材料・治具待ち ほぼ無い 工程全体の10〜15%

この乖離こそが「忙しいのに利益が残らない」状態の正体です。会社全体の付加価値(売上から外部購入費を差し引いた金額)を時間で割った「時間あたり付加価値」を高めるには、まず設備が本当に何時間、付加価値を生む仕事をしているのかを把握しなければなりません。

設備稼働率を構成する3つの要素

設備稼働率の議論で混乱しがちなのは、「稼働率」という一語に複数の意味が含まれていることです。設備総合効率(OEE)の考え方を借りて整理すると、稼働率は次の3要素に分解できます。

設備稼働率を構成する3要素
要素 意味 下がる主な原因
時間稼働率 操業可能時間に対する実稼働時間の比率 段取り替え、故障停止、材料待ち、計画外停止
性能稼働率 理論サイクルタイムに対する実サイクルタイムの比率 チョコ停、速度低下、空運転
良品率 生産数に対する良品数の比率 不良発生、手戻り、再加工

これら3要素を掛け合わせたものが「設備総合効率」と呼ばれる指標です。たとえば時間稼働率70%、性能稼働率80%、良品率95%であれば、総合効率は約53%。「だいたい動いている」と思っていても、付加価値を生んでいる時間は半分程度ということになります。

ここで重要なのは、3要素のうちどこにロスが集中しているかを把握することです。多品種少量・個別受注の現場では、特に「段取り替え」と「チョコ停」の2つに損失が偏在する傾向があります。

隠れ損失の代表格:チョコ停と段取り時間

チョコ停という名の積み上がる損失

「チョコ停」とは、設備が短時間(数十秒〜数分)だけ停止する状態を指します。センサーの感度ずれ、ワーク詰まり、軽微な異常検知などで発生し、作業者がその場で復旧させるため、日報には記録されないことがほとんどです。

1回あたり2分のチョコ停が、1直あたり15回発生すれば30分の損失。月20稼働日で10時間、年間120時間が消えていることになります。設備費チャージレートが1台あたり1,500円/時間であれば、年間18万円の付加価値機会を失っている計算です。複数台あれば数百万円規模になります。

段取り時間は「準備」ではなく「収益機会の喪失」

段取り替えは付加価値を生まない時間です。多品種少量化が進むほど段取り替えの頻度が増え、設備の稼働率を押し下げます。「準備に時間がかかるのは仕方ない」と諦めず、まずは実時間を測ることが出発点になります。

段取り時間短縮の体系的なアプローチについては製造業の段取り替え時間短縮|SMEDで多品種少量生産の利益を伸ばすで詳しく扱っています。

見える化の進め方:4ステップ

設備稼働率の見える化は、いきなり高度なIoTシステムを導入するのではなく、段階的に進めるのが現実的です。

設備稼働率 見える化の4ステップ
ステップ1: 測定対象とロス分類を決める(時間稼働率/性能稼働率/良品率/停止理由)
▶
ステップ2: データ取得方法を決める(信号取り出し・電流センサ・作業者入力など)
▶
ステップ3: ダッシュボードで停止理由別に集計し共有
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ステップ4: 改善活動の効果を再計測で確認しPDCAを回す

ステップ1:ロス分類を決める

最初の関門は「何を測るか」を決めることです。やみくもに全データを取ろうとすると挫折します。次のように停止理由を5〜8種類程度に分類しておくと、後の分析が楽になります。

  • 段取り替え
  • 材料・治具待ち
  • 図面・指示書待ち
  • 故障・突発停止
  • チョコ停(短時間停止)
  • 計画停止(休憩・朝礼)
  • 不良対応・手戻り

ステップ2:データ取得方法を選ぶ

すべてを自動化する必要はありません。設備の起動信号や電流値から自動取得できるものは自動化し、停止理由の入力だけ作業者がタブレットで選ぶ、というハイブリッド構成がコストパフォーマンスに優れます。

従来の感覚的な稼働管理 客観データに基づく見える化
稼働率の根拠 ▶ 現場の体感と日報のメモ
停止理由の把握 ▶ 「最近よく止まる気がする」
改善の優先順位 ▶ 声の大きい人の主張で決定
効果検証 ▶ 「なんとなく良くなった」
経営判断 ▶ 月次決算後に振り返り

ステップ3〜4:ダッシュボードと改善サイクル

集めたデータは、設備別・製品別・停止理由別にダッシュボードで可視化します。重要なのは「金額換算」して見せることです。停止時間に設備費チャージレートと労務費チャージレートを掛けて損失金額として表示すると、経営者も現場リーダーも改善優先順位を判断しやすくなります。

経営ダッシュボードの設計については製造業の経営ダッシュボード設計もあわせてご覧ください。

改善判断は「会社全体」で考える

見える化が進むと、現場から多くの改善提案が出てきます。ここで注意したいのは、設備単体の稼働率を上げることが必ずしも会社全体の利益増につながるとは限らない点です。

たとえばボトルネックではない工程の稼働率を上げても、工場全体のスループット(売上 – 外部購入費)は増えません。むしろ仕掛在庫が増えてキャッシュフローを悪化させる場合すらあります。制約条件(ボトルネック)を起点に考える視点はTOC(制約条件理論)とは?製造業のボトルネック改善で利益最大化する方法で整理しています。

改善の優先順位を決めるときは、次の問いを立てるのが有効です。

  • その設備はボトルネックか、それとも余力工程か
  • 稼働率を上げると会社全体の付加価値はいくら増えるのか
  • 同じ投資を別工程に振り向けたほうが効果は大きくないか

「全体最大」の視点で考えることで、部分最適のための投資を避けられます。

データを経営判断につなげる仕組み

設備稼働率の見える化は、それ自体がゴールではありません。次の3つのループが回り始めて初めて、利益改善に直結します。

  1. 見積精度の向上:実績工数・実績稼働時間がデータとして残れば、次回の見積で実態に即したアワーレートと工数を使える。
  2. 価格交渉の根拠化:稼働率の実績と設備費チャージレートを根拠に、適正な単価を取引先に説明できる。
  3. 設備投資判断:既存設備のボトルネック度合いを把握した上で、追加投資・更新投資の妥当性を「時間あたり付加価値」で判定できる。
見える化が生む3つの経営インパクト
領域 見える化前 見える化後
見積精度 経験と勘で工数設定 実績データに基づく工数設定
価格交渉 値上げ要請の根拠が薄い 稼働実績・チャージレートで論拠化
設備投資 メーカー提案に乗るかどうか 時間あたり付加価値で投資判定

設備投資の判断軸については製造業の設備投資 判断基準|時間あたり付加価値で投資ROIを測る方法で詳述しています。

Factory Advance で設備稼働と案件収益をつなげる

設備稼働率の見える化を始めた中小製造業がしばしば次に直面するのが、「稼働データはあるけれど、案件別の利益とどう紐づければよいかわからない」という壁です。設備が動いていた時間が、どの工番のどの工程で、結果としていくらの付加価値を生んだのか。この最後のひと繋がりがあって初めて、データが経営判断に使える形になります。

クラウド型生産管理システムFactory Advanceは、個別受注・多品種少量の中小製造業に向けて、案件(工番)ごとに「見積試算→実績登録→差異分析→改善」のサイクルを回せるよう設計されています。設備稼働の実績を作業日報や工程実績と組み合わせ、案件別の収益性を可視化することで、見積価格の精度向上・収益管理の強化・納期管理の徹底という3つの効果を狙えます。

設備ごとの実働時間を工程実績から拾う方法は工程管理機能のページにまとめています。 進捗をリアルタイムに把握する考え方は工程進捗の見える化とはもあわせてご覧ください。

設備の停止理由を作業者の入力とあわせて記録する方法は作業日報機能のページにまとめています。 日報を作業記録ではなく利益データとして使う考え方は作業日報を「作業記録」から「利益データ」に変えるで扱っています。

設備稼働率の見える化を、最終的に「時間あたり付加価値の向上」につなげたい方は、Factory Advance の製品紹介資料もご参照ください。

まとめ

設備稼働率を見える化することは、単に「機械の動いている時間を測る」ことではありません。チョコ停や段取り時間といった、これまで日報に載らずに埋もれていた損失を表面化し、会社全体の付加価値最大化につなげるための出発点です。

  • 稼働率は時間稼働率・性能稼働率・良品率の3要素に分解して把握する
  • ロス分類を決め、信号と作業者入力のハイブリッドでデータを取得する
  • 損失を金額換算し、ボトルネックから優先的に改善する
  • 見える化したデータを見積・価格交渉・設備投資の判断に活用する

紙やExcelでは積み上がらなかった現場データを、案件別収益と結びつけて経営判断に使える形にすることが、これからの中小製造業の競争力を左右します。まずは1台、1工程からの計測でも構いません。客観データで現場を語れる工場を目指して、最初の一歩を踏み出しましょう。

参考文献