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締め請求とは?締め日・請求日・支払日の違いと資金繰りへの影響

「20日締め、翌月末払いでお願いします」と客先から言われたとき、その仕事の代金が実際に入金されるのが出荷から何日後になるかを、その場で答えられるでしょうか。締め請求は製造業のBtoB取引でほぼ標準の請求形態ですが、締め日・請求日・支払日という3つの日付が混同されたまま運用されている現場が少なくありません。この3つを区別できていないと、入金が1か月まるごとずれる事故が起きます。 本記事では、締め請求の仕組みと、締め日が資金繰りをどれだけ動かすかを整理します。

締め請求とは何か

締め請求とは、一定の期間に納品したものをまとめて1枚の請求書にする請求のしかたです。月末や20日など、あらかじめ決めた日で期間を区切ります。

対になるのが都度請求で、出荷するたびに請求書を1枚ずつ発行します。

締め請求 都度請求
請求書の枚数 期間ごとに1枚 出荷ごとに1枚
納品書との対応 多対1 ほぼ1対1
事務の負荷 締め日に集中する 分散する
使われる場面 継続取引のBtoB スポット取引、個人向け

製造業の継続取引ではほぼ締め請求です。理由は発注側の都合で、支払業務を月1回にまとめたいからです。つまり締め請求は、こちらの都合ではなく客先の経理の都合で決まっている形式です。

締め日・請求日・支払日は別のもの

3つの日付は役割が違います。混同が事故につながるので、社内では言葉を分けて使ってください。

締め日・請求日・支払日の違い
日付 意味 誰が決めるか 遅れると何が起きるか
締め日 請求対象期間の区切り 客先(発注側) 期間の解釈がずれ、二重請求か請求漏れになる
請求日 請求書を発行して送る日 **自社** 客先の支払処理に間に合わず、入金が1か月ずれる
支払日 客先が入金する日 客先(発注側) 資金繰り計画が崩れる

自社が決められるのは請求日だけです。 締め日と支払日は客先の支払条件として与えられます。したがって締め請求の実務でこちらが管理すべきなのは、締め日から請求書を出すまでに何日かかっているかという一点になります。

ここが遅れると、客先の支払処理の締切に間に合わず、入金が丸ごと1か月先送りになります。 請求書の到着が1日遅れただけで入金が30日遅れる、という不連続な損失が起きるのが締め請求の怖いところです。

「20日締め翌月末払い」を入金までの日数に直す

支払条件は、出荷日から入金日までの日数に直して初めて資金繰りの話になります。

支払条件ごとの入金までの日数
支払条件 最短 最長 平均 備考
月末締め・翌月末払い 30日 60日 **約45日** 月末に出荷したものが最短
月末締め・翌々月10日払い 40日 70日 **約55日**
20日締め・翌月末払い 41日 70日 **約55日** 21日に出荷したものが最長
20日締め・翌々月20日払い 61日 90日 **約75日** 3か月分の運転資金が必要

同じ「翌月末払い」でも、締め日が20日か月末かで平均10日変わります。 そして20日締めの場合、21日に出荷したものは入金まで70日かかります。月初に大きな出荷をした案件の材料費を先に支払っていれば、その差は運転資金として自社が立て替えていることになります。

見積の段階で支払条件を確認しておくことが、資金繰り管理の出発点です。

締め日をまたぐ出荷をどちらの月に入れるか

実務で判断が割れるのが、締め日の前後に出荷したものの扱いです。基準を決めていないと、二重請求か請求漏れのどちらかが起きます。

判断の軸は2つあります。

  • 出荷基準 自社が出荷した日で期間を判定する
  • 検収基準 客先が受け入れ検査を終えた日で判定する

客先が検収基準を採っている場合、自社が出荷基準で請求すると必ずずれます。 20日に出荷して客先の検収が22日なら、自社は今月分に含め、客先は翌月分として処理します。この案件は「請求されたが計上されていない」状態になり、支払保留になります。

支払条件の確認時に、締め日の判定が出荷基準か検収基準かを必ず聞いてください。 取引開始時に確認していない客先があるなら、次の締めの前に確認する価値があります。

締め請求で請求漏れが起きる3つの場所

締め請求は多対1でまとめる処理なので、漏れが発生しやすい構造を持っています。

締め請求で請求漏れが起きる3箇所
場所 起きること 気づくか 防ぎ方
分納の途中回 3回に分けた出荷の2回目が集計から抜ける **気づかない** 受注残と出荷済み数量を案件単位で持つ
締め日をまたいだ出荷 先月分として処理され、今月にも入らない **気づかない** 出荷基準か検収基準かを決めて統一する
仕様変更の追加分 口頭で受けた変更が金額に反映されない 客先も知らないため気づかない 変更を受けた時点で見積を作り直して残す

3つとも「気づかない」タイプの損失です。 請求書を出しすぎれば客先から指摘が来ますが、少なく出した分は誰からも指摘されません。締め請求の運用では、請求書の金額が正しいかではなく、請求対象がすべて拾えているかを確認するのが本質です。

案件単位で受注残が見えていれば、1番目と2番目は構造的に防げます。3番目の記録の作り方は製造業の手戻り対策と追加請求の記録術で扱っています。

締め日と支払サイトが運転資金をどう変えるか

数字で置きます。月商2,000万円の工場を想定します。

売掛金の残高は、おおよそ次の式になります。

売掛金残高 = 月商 × 入金までの平均日数 ÷ 30

支払条件別の売掛金残高(月商2,000万円)
支払条件 平均入金日数 売掛金残高 月末締め翌月末払いとの差
月末締め・翌月末払い 45日 3,000万円 基準
20日締め・翌月末払い 55日 3,667万円 **+667万円**
20日締め・翌々月20日払い 75日 5,000万円 **+2,000万円**

20日締め翌々月20日払いの客先が主力になると、月商1か月分に相当する2,000万円を余分に立て替えることになります。 これは利益とは無関係に必要になる資金です。黒字でも資金が回らない構造の一因がここにあります。

判断は会社全体で見てください。支払条件の悪い客先を切ればよいという話ではありません。 その客先の粗利がなくなれば固定費の回収が減ります。増分で見るべきは、「この客先の仕事を受けることで増える粗利」と「立て替えに必要な資金の調達コスト」の比較です。667万円の立て替えを金利2%で調達しても年13万円で、粗利がそれを上回るなら受ける判断になります。

むしろ効果が大きいのは、締め後の請求書発行を早めることです。 これは客先との交渉が不要で、自社だけで実行できます。資金繰りの構造全体については製造業で黒字なのに資金繰りが悪い理由で扱っています。

締め請求の事務を軽くする

締め請求の事務は締め日に集中します。ここが月末残業の主因になっている工場は多いはずです。

軽くする方向は3つです。

  1. 締め日に集める作業をなくす。 請求書を作る作業の実体は「期間内の納品を集める作業」です。納品の記録が案件単位で残っていれば、集める作業自体が消えます
  2. 客先ごとの締め日を一覧で持つ。 20日締めと月末締めが混在していると、月内に締め作業が2回発生します。どの客先がいつ締めかを事務が把握できる状態にしてください
  3. 請求書の発行を締め日の翌営業日に固定する。 前述のとおり、遅れると入金が1か月ずれます。締め日から発行までの日数を測って、短縮の対象にしてください

見積から請求までを1つのデータでつなぐ全体像は見積書・納品書・請求書の連動、手書きやExcelから抜け出す手順は手書き請求書の限界にまとめています。

Factory Advance での締め請求

クラウド型の案件管理システム「Factory Advance」は、見積から受注、納品、請求までを案件単位で管理します。締め請求の観点では次のように働きます。

  • 客先ごとに締め日を設定し、期間内の納品を集約して請求書を作成できる
  • 工番に紐付くため、分納しても受注残と出荷済みの数量が分かれて残る
  • 請求金額が案件別の収益管理に直結するので、請求事務がそのまま採算データになる
  • 請求済みと未請求が分かれるため、請求対象の取りこぼしを確認できる

請求と入金の管理機能は請求管理機能のページにまとめています。

締め日の事務を軽くし、請求漏れをなくしたい中小製造業の経営者・工場長は、Factory Advance 公式サイト、および収益管理の進め方をまとめた資料をご覧ください。

まとめ

締め請求は客先の経理の都合で決まっている形式で、自社が管理できる範囲は限られています。要点を整理します。

  • 締め日と支払日は客先が決める。自社が決められるのは請求日だけ
  • 請求書の発行が遅れると、1日の遅れで入金が30日ずれるという不連続な損失が起きる
  • 支払条件は入金までの日数に直して読む。同じ翌月末払いでも締め日で平均10日変わる
  • 締め日の判定が出荷基準か検収基準かを客先に確認する。 違っていると支払保留になる
  • 締め請求の請求漏れは3箇所(分納の途中回・締め日をまたいだ出荷・仕様変更の追加分)で起き、3つとも気づかない
  • 支払条件が悪い客先は、切るのではなく増分で判断する。立て替え資金の調達コストと粗利を比べる
  • 自社だけで実行できる打ち手は、締め後の請求書発行を早めること

最初にやることは、客先ごとの締め日と支払条件を一覧にすることです。締め作業が月内に何回発生しているかが、そこで初めて見えます。

参考文献

投稿者プロフィール

尾畠 悠樹
尾畠 悠樹
株式会社イーポート 代表取締役

■ ITコーディネーター
■ キャッシュフローコーチ®
■ JRCA認定ISMS審査員補
■ 東京都中小企業向け
  デジタル技術導入促進ナビゲーター
■ 中小企業庁「みらデジ」デジタル化支援者

兵庫県出身。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーを経て2008年に会社設立。業務用システムの受託開発及び中小製造業向けのパッケージの開発・販売を行う。