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図番とは?品番との違いと設計変更時に版数を上げるかの判断

「この部品、前と同じ図番なのに寸法が違う」。製造現場で最も厄介なトラブルの一つです。図番は図面を識別するための番号ですが、何をもって別の図番とするかの基準が社内で決まっていないと、同じ番号で違うものが流通します。 特に迷うのが設計変更のときで、図番を新しく振るのか、既存の図番の版数を上げるのかは判断が分かれます。本記事では図番と品番の違いを整理したうえで、この判断の基準と、図番が破綻したときの振り直し手順を扱います。

図番とは何か

図番(図面番号)は、1枚の図面を一意に識別するための番号です。設計部門が図面を作成するときに振ります。

押さえるべきなのは、図番が識別しているのは「図面」であって「部品」ではないという点です。ここを混同すると、後述する品番との使い分けが崩れます。

1枚の図面に複数の部品が描かれていることもあり、逆に1つの部品に対して加工図と組立図の2枚が存在することもあります。図面と部品は1対1ではありません。 図番はあくまで紙またはCADファイル1つに対する番号です。

図番・品番・部品番号・品目コードの違い

現場で混在しやすい4つの番号を弁別します。呼び方は会社によって違うので、自社での定義を確認してください。

図番・品番・部品番号・品目コードの違い
番号 何に対して振るか 振る部門 変わるタイミング 混同すると起きること
図番 **図面1枚** 設計 図面を新規作成したとき 図面と部品の対応が追えなくなる
品番(部品番号) **部品そのもの** 設計または生産管理 部品の仕様が変わったとき 同じ部品を別物として在庫管理する
品目コード 在庫・購買の管理単位 生産管理・購買 調達品目として登録したとき 発注と在庫が突き合わせられない
客先図番 客先が指定する図面番号 **客先** 客先の都合 客先の指示と社内の図面が照合できない

中小製造業では図番と品番を兼用しているケースが多く、それで回っているなら問題ありません。 兼用が破綻するのは、1枚の図面に複数部品を描くようになったとき、または同じ部品を複数の客先に別図番で納めるようになったときです。

番号体系全体の設計は製造業の番号体系の作り方、案件を識別する工番については工番とは何かを整理した記事で扱っています。

図番の桁構成をどう決めるか

図番の付け方に業界標準はありません。自社で決めるものです。 実務でよく使われる構成は次の要素の組み合わせです。

  • 客先コード 主要客先が固定している場合に有効。ただし客先が増えるとコードが枯渇する
  • 製品分類 加工方法や製品カテゴリ。分類が後から変わると番号の意味が壊れる
  • 年度 図面の作成年。古い図面かどうかが番号だけで分かる
  • 連番 必須。桁数を多めに取る

分類コードを入れすぎないでください。 番号に意味を持たせるほど、事業が変わったときに番号体系が破綻します。「客先が増える」「製品分類が変わる」は普通に起きます。

実務的な落としどころは「年度+連番」だけの単純な構成です。検索はシステム側の属性で行い、番号そのものには意味を持たせない、という設計が長持ちします。桁数は現在の年間発行枚数の10倍を目安に取ってください。

設計変更で図番を変えるか、版数を上げるか

図番の運用で最も判断が分かれるのがここです。 基準を決めていない会社では、設計者ごとに判断が違うため、現場が混乱します。

判断の軸は1つです。互換性があるかどうかです。

図番を変えるか版数を上げるかの判断基準
変更の内容 互換性 扱い 理由
寸法公差を緩めた あり **版数を上げる** 既存在庫や作り置きがそのまま使える
表面処理を変えた あり(用途次第) **版数を上げる** 組付けに影響しない範囲なら同一部品
材質を変えた **なし** **図番を変える** 強度が変わる。旧材の在庫は代替できない
取付穴の位置を変えた **なし** **図番を変える** 旧版と互換性がなく、混在すると組み付かない
注記や図面の描き方を直した あり **版数を上げる** 部品自体は変わっていない
客先の要求で寸法を変えた **なし** **図番を変える** 旧版で作った在庫は使えない

互換性がないのに版数を上げるだけで済ませると、事故が起きます。 「図番は同じだから前の在庫を使える」と現場が判断し、組み付かない部品が製造ラインに乗ります。逆に、互換性がある変更まで図番を変えると、図番が増えすぎて過去の実績工数を引き当てられなくなります。

判断を運用に落とす

基準を決めたら、次の2点を運用に組み込んでください。

  • 版数を上げたときは、旧版を「廃止」として残す。 削除しないでください。過去に納めたものの図面は保管が必要です
  • 図番を変えたときは、旧図番との関係を記録する。 「A-1234 は A-1201 の後継」という情報がないと、客先からの問い合わせに答えられません

客先図番と自社図番の二重管理

支給図で製造している工場では、客先の図番と自社の図番が両方存在します。 ここを整理していないと、客先からの問い合わせで毎回図面を探し回ることになります。

客先図番と自社図番の管理
対応表がない状態 対応表がある状態
客先の問い合わせで図面を探し回る 客先図番から自社図面を即座に引ける
同じ部品を客先ごとに別物として管理 同一部品として実績を集約できる
過去の実績工数を引き当てられない 類似案件の工数から見積を積める
担当者しか対応関係を知らない 誰でも照合できる

自社図番を振らず客先図番だけで管理する運用も成立します。 客先が固定で、図番の重複がないなら、そのほうが対応表が不要で楽です。複数客先から同じような図番が来るようになった時点で、自社図番の導入を検討してください。

図番と工番の関係

図番と工番は役割が違います。

  • 図番 何を作るかを識別する。繰り返し使われる
  • 工番 いつ誰の注文で作るかを識別する。案件ごとに新しく振られる

同じ図番の部品を3回受注すれば、工番は3つ、図番は1つです。この関係が記録されていると、「この図番の部品は過去に何時間かかったか」が分かります。

ここが原価と見積に直結します。図面を工番に紐付ける管理の考え方は製造業の図面管理を工番に紐付けるシステム、実績工数を見積に返す手順は原価差異分析のやり方で扱っています。

図番が破綻する3つのパターン

図番が破綻する3つのパターン
パターン 起きること 前兆 対処
桁が足りなくなる 連番が上限に達し、別の記号を足して延命する 「A-9998」の次に「A-9998-2」が現れる 振り直すか、新しい体系を並行運用する
意味を持たせた分類が現実と合わなくなる 分類コードが実態と違う図面が増える 「この分類コードは実際は違うんだけど」という会話 分類を番号から外し、属性として持たせる
部門ごとに別ルールができる 設計と製造で違う番号が使われる 同じ部品を指す番号が2つ以上ある 対応表を作り、どちらを正とするか決める

3番目が最も見つけにくく、最も損失が大きいパターンです。 部門ごとに番号が違うと、設計・製造・購買の情報が突き合わせられず、実績が集約できません。

版数の間違いはいくらの損失になるか

数字で置きます。版数管理が曖昧な状態で起きる損失を試算します。

  • 旧版の図面で製造してしまう事故: 年6件
  • 1件あたりの再製作コスト: 材料費3万円 + 工数8時間 × 賃率4,000円 = 6.2万円
  • 年間の直接損失: 6件 × 6.2万円 = 年37万円

これに加えて、納期遅延の対応と客先への説明に工数が取られます。信用の毀損は金額化できませんが、支給図の取引では図面管理の不備は取引継続の判断に直接影響します。

判断は会社全体で見てください。図番と版数の管理は設計部門の仕事に見えますが、損失が発生するのは製造と出荷の側です。設計の手間を減らすために版数管理を簡略化すると、その分のコストが下流に移るだけで、会社全体では増えます。図面の探し物時間を含めた全体像は製造業の図面管理を工番に紐付けるシステムにまとめています。

Factory Advance での図面と図番の管理

クラウド型の案件管理システム「Factory Advance」は、案件(工番)を軸に見積から工程、実績、請求までを管理します。図面については次のように働きます。

  • 図面を工番に紐付けて保管できるため、案件から図面を引ける
  • 同じ図番の部品を複数回受注しても、過去の実績工数を図番単位で振り返れる
  • 改訂履歴を残せるので、どの版で製造したかを追跡できる
  • 図面AI-OCRのオプション(スタンダードプラン以上、月額1万円)で、図面から情報を読み取る運用にも対応

図面と技術文書の管理機能は図面管理機能のページにまとめています。番号体系全体の設計は製造業の番号体系の作り方、工程ごとの管理項目を定める文書はQC工程表とはもあわせてご覧ください。

図番と版数の管理を仕組みで支えたい中小製造業の経営者・工場長は、Factory Advance 公式サイト、および製品紹介資料をご覧ください。

まとめ

図番は図面を識別する番号で、付け方は自社で決めるものです。要点を整理します。

  • 図番が識別しているのは「図面」であって「部品」ではない。 図面と部品は1対1ではない
  • 図番と品番の兼用は、回っているなら問題ない。破綻するのは1枚に複数部品を描くようになったとき
  • 桁構成に意味を持たせすぎない。「年度+連番」で、検索は属性で行う設計が長持ちする
  • 設計変更の判断軸は互換性があるかどうか。材質変更・取付穴の変更は図番を変える。公差の緩和・注記の修正は版数を上げる
  • 互換性がないのに版数を上げるだけで済ませると、旧在庫が使われて組み付かない事故が起きる
  • 版数を上げたら旧版は削除せず廃止として残す。図番を変えたら旧図番との関係を記録する
  • 客先図番だけで管理する運用も成立する。複数客先から似た図番が来た時点で自社図番を検討する
  • 図番は繰り返し使われ、工番は案件ごとに振られる。この関係が記録されていれば、図番単位で実績工数を引ける

まず社内で「どういう変更なら図番を変えるか」を1枚の紙に書き出してください。設計者ごとに判断が違っている状態が、図番トラブルの最大の原因です。

参考文献

投稿者プロフィール

尾畠 悠樹
尾畠 悠樹
株式会社イーポート 代表取締役

■ ITコーディネーター
■ キャッシュフローコーチ®
■ JRCA認定ISMS審査員補
■ 東京都中小企業向け
  デジタル技術導入促進ナビゲーター
■ 中小企業庁「みらデジ」デジタル化支援者

兵庫県出身。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーを経て2008年に会社設立。業務用システムの受託開発及び中小製造業向けのパッケージの開発・販売を行う。