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展開寸法とは?完成品寸法との違いと端材から取れるかの判断

「これ、この板で足りるだろ」。図面の外形寸法を見て端材を1枚持っていき、切ってから足りないと分かる。板金加工でこの失敗が繰り返されるのは、勘が悪いからではありません。図面に書かれているのは曲げ終わったあとの寸法であり、切る前に必要な板の大きさとは別の数字だからです。本記事では、展開寸法とは何か、完成品寸法と一致しない理由、伸び代とベンド控除とK係数の関係、図面に展開寸法が無いときの出し方、端材から取れるかを判断する手順、そして間違えたときにいくらの損失になるかまでを扱います。

展開寸法とは何か

展開寸法とは、曲げる前の平らな状態での板の寸法のことです。展開長、展開図、ブランク寸法とも呼ばれます。板金加工では、平らな板を切ってから曲げて立体にします。切る工程で必要になるのは、この平らな状態での寸法です。

図面に描かれているのは、たいてい曲げ終わった完成品の寸法です。組み立てたときに合うかどうか、取り付け穴の位置が正しいかどうかを示すのが図面の役割なので、これは自然なことです。設計する側は完成品の形を指示し、それをどう作るかは加工する側が決めます。展開寸法は、加工する側が自分で出さなければならない数字です。

ここに、板金加工特有のずれが生まれます。曲げるという工程は、板を折るだけではありません。材料が変形します。曲げの外側は引っ張られて伸び、内側は圧縮されて縮みます。伸びも縮みもしない面がその中間にあり、これを中立面と呼びます。展開したときの長さは、この中立面に沿った長さで決まります。

展開寸法という言葉と展開図という言葉は、現場では同じ意味で使われることが多いのですが、厳密には指しているものが違います。展開図は平らに開いた状態の図面で、外形の輪郭と穴の位置を含みます。展開寸法は、その図面から読み取れる縦横の外形寸法です。材料を選ぶときに要るのは展開寸法のほうで、加工プログラムを作るときに要るのは展開図のほうです。材料を探す段階では、輪郭全体ではなく外形の2辺が分かれば足ります。

だから、完成品の外側の寸法を単純に足し合わせても、必要な板の長さにはなりません。曲げの数だけ差が出ます。差はミリ単位ですが、曲げが4か所5か所とあれば、合計で1センチを超えることも珍しくありません。端材から取れるかどうかの判断では、この1センチが結果を分けます。

展開寸法を出す作業は、材料を手配する前に必要です。切ってから足りないと分かっても、材料も時間も戻りません。展開寸法は、加工の途中で使う数字ではなく、材料を決める前に確定させておく数字です。

この数字を誰が持っているかは、会社によってばらばらです。プログラムを作る担当者の頭の中にある、その人が使っているCADの中にある、あるいは過去のプログラムファイルの中にしか無い。どれも「その人に聞かないと分からない」状態です。材料を探すのは別の人であることが多いので、聞きに行く手間が発生します。手間が発生すると、聞かずに勘で判断する人が出ます。展開寸法が特定の人の中にあるうちは、切り直しは無くなりません。

展開寸法は、板の縦と横の2方向それぞれについて出す必要があります。片方だけを見て判断すると、長さは足りていても幅が足りない、という失敗が起きます。曲げ線が縦横の両方にある部品では、どちらの方向にも展開の差が出ます。端材に当てはめるときは、必ず2辺の組で比べてください。

完成品寸法と展開寸法が一致しない理由

具体的な形で見ます。コの字に曲げる部品を考えます。図面には、外側の寸法として立ち上がり30、底面50、立ち上がり30と書かれているとします。この3辺を足すと110です。ところが、必要な板の長さは110ではありません。110より短くなります。

理由は、曲げの部分にあります。図面上は角がぴったり直角に描かれていますが、実際の曲げには内側の半径があります。角が丸いということは、その丸みの分だけ板が回り込んでいるということです。外側の寸法を足し合わせた値は、角が完全に尖っている場合の長さであり、実際の板はそれより短くて済みます。

この差を表す言葉が2つあります。伸び代とベンド控除です。どちらも同じ現象を別の角度から表しています。呼び方は現場によって違い、伸び代を「伸び」、ベンド控除を「引き算値」「減算値」と呼ぶこともあります。社内で呼び方が2つ以上あると、足すのか引くのかを間違えます。用語は1つに決めてください。

完成品寸法と展開寸法のずれ(コの字1個・90度曲げ2か所の場合)
見ている数字 値の例 この数字で端材を選ぶとどうなるか
完成品の外形(底面) 50 mm 立ち上がりの分をまるごと見落とす。まったく足りない板を選ぶ
外側寸法の単純合計 30 + 50 + 30 = 110 mm 実際より大きい板を選ぶ。切れるが端材を余分に消費する
展開寸法 110 − ベンド控除の合計 切る長さとして正しい。ただしこのままでは掴み代と切り代が入っていない
必要寸法 展開寸法 + 掴み代 + 切り代 端材を選ぶときに突き合わせるべき数字はこれ

表の1行目が、現場で実際に起きている失敗です。図面の一番大きな数字を見て「50なら余裕だ」と判断し、60×200の端材を持っていく。曲げる前の板は100ミリを超えているので、切った時点で足りません。完成品寸法は、切る前の板の大きさについて何も語っていません。

2行目も損をしています。単純合計で判断すると、実際より数ミリから十数ミリ大きい板を選びます。1枚なら大きな差ではありませんが、1枚の端材から複数の部品を取るときは、この余分が積み上がって取れる個数が1個減ります。

ずれの大きさを決めているのは、曲げの内側半径と板厚です。内側半径は、図面に指定がなければ加工側が決める数字です。使う金型のV幅と材質で自然に決まる値があり、それをそのまま使うのが普通です。ここが会社ごとに違うので、同じ図面でも会社が違えば展開寸法が違います。他社の展開寸法をそのまま借りられないのは、このためです。

板厚が厚くなるほど、ずれは大きくなります。板厚1.0ミリの部品と板厚3.2ミリの部品では、1曲げあたりの差が数倍になります。薄板で覚えた感覚のまま厚板の部品を判断すると、外す幅が大きくなります。厚板を扱う頻度が少ない会社ほど、この失敗が起きやすくなります。

曲げの数も効きます。1曲げの部品なら差は数ミリで、端材の余裕に吸収されることが多いのですが、曲げが4か所5か所ある箱物では、差が十数ミリまで積み上がります。曲げが多い部品ほど、完成品寸法で判断したときの外れ方が大きくなります。判断を勘に頼ってよい部品とそうでない部品の線引きは、曲げの数で引くのが分かりやすい方法です。

もう一つ、曲げには戻りがあります。金型を離すと、材料が弾性でわずかに開きます。この戻りを見込んで曲げ角度を調整するのが実務ですが、戻りの量も材質と板厚で変わります。戻りの調整は角度の話なので展開長には直接効きませんが、角度が設計値からずれれば、そこから先の寸法が積み上がってずれます。展開寸法だけを合わせても、曲げの条件が安定していなければ製品は合いません。

図面の読み方にも注意が要ります。板金の図面では、寸法が外側で入っているのか内側で入っているのかが明示されていないことがあります。外側寸法だと思って計算した値が、実は内側寸法だった場合、板厚の2倍だけずれます。板厚3.2ミリなら6.4ミリの差です。曖昧なときは、図面を出した相手に確認してください。確認の1本の電話が、切り直し1件分の費用を守ります。

伸び代・ベンド控除・K係数の関係

3つの言葉の関係を整理します。用語が混ざると計算を間違えるので、何を足して何を引くのかを固定しておきます。

伸び代(ベンドアローワンス)は、曲げ部分の中立面に沿った長さです。直線部の長さに、この伸び代を足し合わせると展開長になります。式にすると、展開長 = 直線部の長さの合計 + 伸び代の合計、です。

ベンド控除(ベンドディダクション)は、外側寸法の合計から引く値です。式にすると、展開長 = 外側寸法の合計 − ベンド控除の合計、です。図面が外側寸法で描かれていることが多いので、実務ではこちらのほうが使いやすくなります。

伸び代とベンド控除は、同じ現象を別の起点から表したものです。どちらか一方が分かれば、もう一方も求まります。90度曲げの場合、ベンド控除 = 2 ×(内側半径 + 板厚)− 伸び代、という関係になります。

K係数は、中立面が板厚のどのあたりにあるかを表す比率です。板の内側の面から中立面までの距離を、板厚で割った値です。伸び代を計算するときに、この係数が必要になります。90度曲げなら、伸び代 = 円周率 ÷ 2 ×(内側半径 + K係数 × 板厚)です。

ここで重要な注意点があります。K係数の値を、他社の資料や一般的な表からそのまま持ってきてはいけません。この値は、材質、板厚、内側半径、使う金型のV幅、曲げ方によって変わります。同じ材質でもロットが変われば動きます。数値をひとつ決め打ちにすると、それが合っている条件のときだけ正しく、他の条件では毎回ずれます。

自社の値は、実測で決めるのが確実です。手順は単純です。

  • よく使う材質・板厚の板から、長さの分かるテストピースを切る
  • 実際に使う金型で、実際に使う角度に曲げる
  • 曲げたあとの外側寸法を測る
  • 切る前の長さと外側寸法の合計を比べて、差がそのままベンド控除になる
  • 材質・板厚・金型・角度の組み合わせごとに、この値を表にして残す

一度作れば、次からは表を引くだけです。計算式より、自社の実測値を並べた表のほうが、現場では速くて確実です。

実測するときの注意点を3つ挙げます。1つめは、テストピースの長さを測ってから曲げることです。切ったままの寸法が図面どおりとは限りません。切断幅の分だけ短くなっていることがあります。曲げる前の実寸を記録してください。

2つめは、同じ条件で複数枚曲げることです。1枚だけだと、その1枚の材料のばらつきが値に混ざります。数枚曲げて平均を取れば、実務で使える精度になります。1枚で決めた値は、次のロットで合わなくなることがあります。

3つめは、測る場所を決めることです。曲げた部品の外側寸法を測るとき、どこにノギスを当てるかで値が変わります。角の丸みの外側なのか、平らな面の延長線上なのか。測る場所を社内で統一しないと、人によって違う補正値ができます。

実測が難しい条件もあります。厚い板、小さすぎるテストピース、特殊な材質。こうした条件では、まず計算値で切ってみて、実物との差を測って表に反映する、という順序でも構いません。最初の1枚は捨てる前提で見ておくほうが、結果的に無駄が少なくなります。

表を作るときの粒度も決めておきます。細かく分けすぎると行数が増えて引くのが面倒になり、粗すぎると精度が落ちます。実務で使いやすいのは、材質・板厚・金型のV幅・曲げ角度の4つを行の見出しにする形です。この4つが同じなら、ベンド控除はほぼ同じ値になります。角度が90度だけの会社なら、行はさらに減ります。

表は、最初から全部を埋めようとしないでください。よく使う組み合わせを上位から数えて、受注の大半を占める範囲だけを先に埋めます。残りは必要になったときに1行ずつ足していきます。使う前から完成させようとすると、作るだけで終わって運用に入れません。

実測した値は、いつ測ったかも一緒に残しておきます。金型を替えた、機械を入れ替えた、仕入先が変わった。こうした変化があったときに、どの行を測り直すべきかが分かります。値だけを並べた表は、古くなったことに誰も気づけません。

表を作る作業は、ベテランの感覚を社外に出せる形にする作業でもあります。展開寸法を勘で出せる人がいる会社では、その人がいる間は問題が起きません。問題が起きるのは、その人が休んだ日と、辞めた後です。実測して表にしておけば、感覚が数字として残ります。技能を引き継ぐという話は抽象的になりがちですが、ベンド控除の表は、引き継げる形になった技能そのものです。

計算の流れを一度通しておきます。以下の数値は手順を示すためのもので、この値を自社に当てはめてよいという意味ではありません。板厚2.0ミリ、内側半径2.0ミリ、90度曲げ、K係数を仮に0.4と置きます。伸び代は 円周率÷2 ×(2.0 + 0.4×2.0)で約4.4ミリ。ベンド控除は 2×(2.0+2.0)− 4.4 で約3.6ミリ。先ほどのコの字なら曲げが2か所なので、展開長は 110 − 3.6×2 で約102.8ミリになります。単純合計の110との差は7.2ミリ、完成品の底面50との差は52.8ミリです。

展開寸法が必要になる3つの場面

展開寸法を使う場面は、切る直前だけではありません。3つの場面があり、それぞれで求められる精度が違います。

1つめは、材料の手配と端材の選定です。ここでは、収まるかどうかが判定できればよいので、多少余裕を見た値で構いません。むしろ余裕を見ておかないと、切ってから足りない事態になります。ただし余裕を見すぎると、使えるはずの端材を候補から落とします。この場面での精度は、掴み代と切り代をきちんと足せているかで決まります。

2つめは、加工プログラムの作成です。ここは実寸が要ります。数ミリのずれがそのまま製品の寸法違いになります。曲げの位置、穴の位置、外形。すべてが展開した状態の座標で表されるので、伸び代の見積もりを間違えると、曲げた後に穴の位置がずれます。穴が曲げ部に近い部品ほど、この誤差が効いてきます。

3つめは、見積です。1枚の定尺材や端材から何個取れるかが、材料費を決めます。展開寸法が分からないまま完成品寸法で見積もると、取り数を多く見積もりすぎて、実際には材料が足りなくなります。足りない分は追加で買うことになり、その差額は見積に入っていません。

3つの場面で共通しているのは、展開寸法を出す作業が1回で済んでいない会社が多いことです。材料を手配する人が概算で出し、プログラムを作る人が改めて出し、見積を作る人がまた別に出す。3人が別の数字を持っていると、どこかで食い違います。展開寸法は、最初に出した1つの値を全員が見る形にしてください。

順番も大切です。見積の段階で展開寸法を出しておけば、材料の手配とプログラム作成でその値を使い回せます。逆に、見積では完成品寸法のまま概算し、受注してから展開を出す運用だと、見積の材料費と実際の材料費が最初からずれます。ずれた分は誰にも請求できないので、そのまま利益から引かれます。

見積の段階で出す手間を惜しむ気持ちは分かります。失注する案件の分まで計算することになるからです。それでも、繰り返し来る図面については計算しておく価値があります。一度出した値が図番に紐づいていれば、次の引き合いでは計算がいりません。同じ客先から似た部品が繰り返し来る会社ほど、この効果が大きくなります。

反対に、一品限りで二度と来ない部品については、見積段階では概算で構いません。すべての図面に同じ精度を求めると、見積作業そのものが回らなくなります。繰り返し来る図面と一品物を分けて、繰り返しのほうに手をかけるのが現実的です。

3つの場面のうち、社内で最も軽く扱われがちなのが1つめの材料手配です。プログラム作成は間違えれば製品が不良になるので誰もが慎重になり、見積は金額に直結するので確認が入ります。材料の手配だけは、間違えても「もう1枚出せばいい」で済んでしまうことが多いからです。1枚出し直すたびに、材料費と時間が消えていることは記録に残りません。だからこそ、ここを仕組みで支える価値があります。

展開寸法の管理は、加工の精度を上げる話ではありません。同じ数字を全員が同じタイミングで見られるようにする話です。精度は金型と実測で決まりますが、共有は仕組みで決まります。

図面に展開寸法が書かれていないとき

支給される図面に展開寸法が書かれていることは、ほとんどありません。設計側は完成品の形を指示するのが仕事なので、これは当然です。展開寸法は加工側で出します。出し方は3つあります。

1つめは、CADの板金機能で展開することです。3次元で作った形状を平らに開く機能が、板金向けのCADには備わっています。この方法の精度は、CADに設定してある補正値がその会社の実際の曲げと合っているかどうかで決まります。設定が初期値のままだと、画面上は正しく見えても実物と合いません。導入時に自社の実測値を入れておく必要があります。

2つめは、自社の補正値表から手計算することです。前の章で作った、材質・板厚・金型・角度ごとのベンド控除の表を使います。外側寸法を足して、曲げの数だけ控除を引く。電卓で数十秒です。CADが無くても、この方法なら誰でもできます。

3つめは、テストピースで実測することです。新しい材質、初めての板厚、特殊な角度。表に無い条件のときは、実際に1枚曲げて測るのが最も確実です。時間はかかりますが、その1回で表に1行増えるので、次からは計算で済みます。

どの方法で出すにしても、決めておくべきことが2つあります。誰が出すかと、どこに残すかです。

誰が出すかを決めていないと、その日の担当者によって値が変わります。値が変わると、同じ図番の部品なのに前回と違う大きさで切ることになります。出す人を決めて、その人が出した値を正とする、と決めてください。

どこに残すかも重要です。展開寸法は、図番と紐づけて保存します。同じ部品を半年後にまた作ることになったとき、前回の展開寸法をそのまま使えれば、計算も検証もいりません。2回目以降の再計算をなくすことが、展開寸法を管理する一番の効果です。図番と図面、加工条件をどう対応づけるかは図番とはで扱っています。材料の在庫と図番を突き合わせる考え方は定尺材・端材管理のページに整理しています。

残す場所は、図面のファイル名に書き込むのでも、Excelの一覧でも構いません。条件は1つだけで、材料を探す人がその場で見られることです。事務所のパソコンにしか無い値は、棚の前では使えません。

残す項目も決めておきます。展開寸法の縦と横だけでは足りません。材質、板厚、内側半径、曲げ角度、曲げ回数、そして計算に使った補正値の出どころを一緒に残してください。半年後に同じ図番を作るとき、条件が同じかどうかを確認できなければ、結局計算をやり直すことになります。

改訂への対応も決めておきます。図面が改訂されて曲げが1か所増えたのに、展開寸法が古いまま残っていると、それを信じて切った板が足りません。図面の版数と展開寸法を対で持ち、版が変われば展開寸法も無効にするという扱いにしてください。古い値が残っているほうが、値が無いより危険です。

支給図面がPDFや紙の場合、材質と板厚を読み取る作業自体に時間がかかります。図面から材質・板厚・寸法を機械に読み取らせて、人が確認してから使う、という手順にすれば入力の時間は減ります。ただし読み取った値をそのまま採用してはいけません。読み取りは入力補助であって、確認を省く仕組みではありません。確認の一手を残しておくことで、読み間違いがそのまま材料の手配に流れることを防げます。

端材から取れるかを判断する手順

ここまでの内容を、実際の判断手順にまとめます。順番を守ることが大切です。順番を飛ばすと、飛ばした場所が失敗の原因になります。

端材から取れるかを判断する5段階と、飛ばしたときに起きること
段階 やること 飛ばすと起きること
1. 材料条件の確定 図面から材質・板厚・表面処理・目方向の指定を読む 寸法だけで選び、後工程で材質違いが判明する
2. 展開寸法の確定 図番に紐づく値を引く。無ければ補正値表から算出する 完成品寸法で判断し、切ってから足りないことが分かる
3. 必要寸法の算出 展開寸法に掴み代・切り代・部品間隔を足す ぎりぎりの板を選び、掴めずに曲げられない
4. 端材の検索 必要寸法が収まる板を、面積の小さい順に並べる 大きい板から使い、小さい板だけが棚に残る
5. 現物確認 傷・錆・反り・既存の穴・目方向を見る 画面上は取れるはずの板が、実物では使えない

この手順を紙のチェックリストにして、材料を出す場所に置いておくのが手軽な始め方です。5行の紙に、材質・板厚、展開寸法、必要寸法、選んだ在庫番号、現物確認の可否を書く欄を作ります。埋めながら進めれば、飛ばした段階がひと目で分かります。チェックリストは、慣れた人のためではなく、慣れていない人が同じ結果を出すためにあります。

しばらく運用したら、埋まっていない欄がどこかを見てください。毎回同じ欄が空欄なら、その段階が現場にとって手間になっているという意味です。手間の中身を聞いて、そこを仕組みで軽くします。守られないルールは、意志の問題ではなく設計の問題です。

段階を分けておくと、担当を分けられるという利点もあります。1と2は図面と自社の値を扱う作業なので、事務所でもできます。3と4は計算と検索なので、システムに任せられます。5は棚での作業です。全部を1人が続けてやらなければならない、という思い込みを外すと、待ち時間が減ります。図面が届いた時点で1と2を済ませておけば、加工の直前に慌てることがありません。

この5段階のうち、機械にやらせられるのは3と4です。1は図面を読む作業、2は自社の値を引く作業、5は現物を見る作業なので、人の判断が入ります。3と4を機械にやらせるだけでも、判断の時間は大きく縮みます。

1段階目で見落とされやすいのが表面処理です。めっきや塗装の指定がある部品では、端材の表面状態がそのまま製品の外観に出ます。傷のある端材は、内部部品には使えても外装には使えません。材質と板厚が合っていても使えない端材があることを、最初の段階で判定に入れてください。

2段階目については、値が無いときにどうするかを決めておきます。図番に紐づく展開寸法が無い場合、その場で計算するのか、計算できる人に回すのか。回す運用にするなら、回している間に材料の判断を止めることです。止めずに勘で進めると、後から出てきた正しい値と食い違います。

3段階目の必要寸法は、部品の個数によって変わります。1枚の端材から3個取るなら、部品間隔が2か所分入ります。個数を確定させてから必要寸法を作ってください。1個分の必要寸法に個数を掛けるだけでは、間隔の分が足りません。

目方向の扱いも決めておきます。目方向の指定がない材料なら、90度回した場合も候補になります。420×310の必要寸法に対して、350×450の板は縦横そのままでは入りませんが、回せば入ります。この判定を人がやると必ず見落とすので、検索する仕組みの側に持たせてください。逆に、目方向の指定がある材料では回してはいけません。材料ごとに指定の有無を持っておく必要があります。

掴み代・切り代・部品間隔を引き忘れると何が起きるか

展開寸法が正しく出せても、そのままの寸法の板では加工できません。3つの余分が必要です。

掴み代は、加工機が板を押さえるために必要な余白です。レーザーやタレットパンチでは、板の縁をクランプで掴みます。掴んでいる部分には加工できないので、その分だけ板が大きくなければなりません。ベンダーで曲げるときにも、掴んで送るための余白が要る場合があります。掴み代を見ていないと、板は足りているのに機械にセットできない、という状態になります。

切り代は、切断そのものが消費する幅です。レーザーやプラズマでは切断幅の分だけ材料が消えます。シャーリングでは切り口が斜めになる分の余裕が要ります。1本の切断で消えるのはコンマ数ミリですが、1枚から複数の部品を取るときは切断の本数だけ積み上がります。

部品間隔は、1枚の板から複数の部品を取るときに、部品と部品の間に空ける隙間です。切り代とは別に必要です。熱の影響で材料が反ることがあり、間隔が狭いと隣の部品の寸法が狂います。

3つの数字は自社の設備で決まります。他社の数値を借りてくると、必ずどちらかに外れます。大きすぎれば使えるはずの端材が候補から落ち、小さすぎれば切ってから加工できないことが分かります。設備を入れ替えたときは見直してください。

3つの余分がどれくらい効くかは、部品の大きさで変わります。1辺が1メートルある部品なら、掴み代の10ミリは1パーセントです。1辺が80ミリの小物なら、同じ10ミリが12パーセントを超えます。小さい部品ほど、余分の割合が大きくなります。小物を端材から取ろうとして「入るはずなのに入らない」ことが多いのは、この割合の問題です。

板を反転させて使う場合にも注意が要ります。既に片側の端が過去の加工で使われている端材は、その辺を掴み代に使えません。台帳の寸法だけを見て「掴み代を含めても入る」と判断しても、実際には使える辺が限られていることがあります。現物確認の段階で、どの辺を掴めるかを見てください。

必要寸法の作り方を、具体的な形で書きます。展開寸法が縦102.8ミリ、横180ミリの部品を1個取るとします。掴み代を長辺の片側に、切り代を各辺に、それぞれ自社の値で足します。合計した値が必要寸法です。端材の台帳と突き合わせるのは、展開寸法ではなく、この必要寸法です。

引き忘れが起きやすいのは、急いでいるときと、いつもと違う部品を作るときです。手順を人の記憶に頼らせず、必要寸法を出す欄を計算のフォーマットに作っておいてください。欄があれば、埋めないと先に進めません。

3つの余分をどこまで削るかは、費用と失敗の確率の比較です。掴み代を5ミリ削れば、その分だけ使える端材が増えます。しかし削りすぎて掴めなければ、切り直しになります。削って浮く材料費と、失敗したときに失う加工費を並べて比べてください。1枚あたり数十円の材料費のために、数千円の切り直しを起こすのは割に合いません。

余分の値は、加工方法によっても変わります。レーザーで抜くのか、タレットパンチで抜くのか、シャーリングで切るのか。同じ部品でも、その日に空いている機械で加工方法が変わる会社では、加工方法ごとに必要寸法が変わることを前提に、余裕を見た値を1つ決めておくほうが運用が楽です。方法ごとに値を分けると、判断のたびにどの機械で加工するかを先に決める必要が出ます。

なお、端材から取れないと判断したときに、その判断の記録を残しておくと後で役に立ちます。同じ寸法帯の部品で毎回端材が足りないなら、残す基準の下限がその寸法帯より上にあるという意味です。取れなかった記録は、端材として何を残すべきかを教えてくれます。材料の在庫全体をどう持つかについては定尺材・端材管理のページに整理しています。

展開寸法の間違いはいくらの損失になるか

展開寸法を間違えて切り直しになったとき、失われるのは材料費だけではありません。材料費、投入済みの加工費、再手配にかかる時間、そして納期。この4つが同時に失われます。

材料費は計算できます。板の重量は 横(m)× 縦(m)× 板厚(m)× 比重(kg/m³)で出ます。鋼なら比重は約7,850kg/m³、アルミなら約2,700kg/m³、ステンレスなら約7,930kg/m³が目安です。これに自社のキロ単価を掛けると金額になります。キロ単価は市況と仕入先で動くので、直近の仕入伝票から拾ってください。

失った材料が端材だった場合、金額をゼロで計算しないでください。端材も買ってきた板です。同じ寸法の板を次の仕事で使えたはずだと考えれば、その板の金額がそのまま損失です。端材を無料の材料として扱うと、切り直しの損失が実態より小さく見えます。

加工費も計算できます。時間あたりのレートを使います。人のレートは、直接工の年間総支給額を、年間就業時間と稼働率の積で割って出します。設備のレートは、設備の年間費用を、年間操業時間と稼働率の積で割って出します。稼働率は、直接お金になる仕事をしている時間の割合です。この2つを足したものが、その工程の1時間あたりの費用です。

切り直し1件の損失を積み上げる(レート・単価は仮の値。自社の実績値に置き換えて計算する)
失われるもの 計算 金額の例
材料費 0.0016 × 0.6 × 0.9 × 7,850 = 6.78 kg × 150円/kg(仮) 約1,020円
プログラム作成のやり直し 0.3時間 × 4,000円/時(仮) 1,200円
段取りと切断のやり直し 0.7時間 × 4,000円/時(仮) 2,800円
材料を探し直す時間 0.3時間 × 4,000円/時(仮) 1,200円
1件あたりの合計 1,020 + 1,200 + 2,800 + 1,200 約6,200円
月に4件起きると 6,200 × 4 × 12か月 年間で約30万円

レートも単価も、表の値をそのまま使わないでください。自社の決算書と作業時間の実績から出した値でなければ、この計算に意味はありません。時間の見積もりも、実際に切り直しが起きたときにストップウォッチで測るのが確実です。

ここで、判断は会社全体で考えてください。年間30万円という数字だけを見ると、対策に30万円までかけてよいという結論になりがちですが、それは正しい見方ではありません。切り直しが起きると、その日の他の仕事が後ろにずれます。ずれた分だけ残業になるか、別の案件の納期が縮みます。失われているのは6,200円ではなく、その時間に流せたはずの仕事です。

対策を打つかどうかは増分で判断します。展開寸法を図番に紐づけて残す仕組みを入れると、増える費用は導入の手間と、値を登録する時間です。減る費用は、切り直しの材料費と加工費、それに2回目以降の再計算にかかっていた時間です。減るほうが大きければやる、小さければやらない。この比較は、切り直しの件数を1か月数えるだけで組み立てられます。

数えていない会社が多いのは、切り直しが記録に残らないからです。伝票には出ません。作業日報にも「材料違いで再切断」とは書かれません。数えるところから始めてください。件数が分かれば、対策の優先順位が他の課題と比べられるようになります。

数え方は簡単で構いません。加工機の横に紙を1枚貼り、切り直しが起きたら日付と図番と理由を1行書く。1か月で何行になるかを見るだけです。理由を書いてもらうと、展開寸法が原因なのか、材質違いなのか、図面の読み違いなのかが分かれます。原因が分かれば、打つ手も変わります。

金額換算をするときに気をつけたいのは、節約できた材料費を利益として扱わないことです。材料費が下がっても、その時間に別の仕事を流せていなければ、会社が稼いだ金額は変わりません。逆に、切り直しが減って加工機の空き時間が増え、その時間に受注を入れられたなら、増えるのは材料費の節約分ではなく、その仕事が生む付加価値です。効果は、浮いた費用ではなく、空いた時間に何を流せたかで測ってください。

外注に出している工程がある場合は、外注先に渡す図面にも展開寸法の扱いを揃えておく必要があります。自社の補正値で展開した図面をそのまま渡すと、外注先の金型では合わないことがあります。完成品寸法で渡して展開は先方に任せるのか、こちらの展開値で切ってから渡すのか。どちらでも構いませんが、案件ごとに変えないでください。変わると、どちらの前提で加工されたかが分からなくなります。

Factory Advance での展開寸法と端材の突き合わせ

Factory Advance は、個別受注生産型の中小製造業向けのクラウド型生産管理システムです。展開寸法そのものを計算する機能は持っていませんが、出した展開寸法を材料の在庫と突き合わせるところを受け持ちます。判断を自動化するのではなく、条件に合う板を漏れなく並べ、選ばれた板を押さえるところまでを担当します。

  • 寸法で探すと、その寸法が収まる端材だけが面積の小さい順に並ぶ。大きい板から使ってしまう事故を防げる
  • 目方向の指定がない材料は、90度回転した場合も収まるかを判定して候補に入れる
  • 図面から探す機能は、PDFや画像から材質・板厚・展開寸法を読み取る。読み取った値は人が確認・修正してから候補を出す
  • 言葉で探す機能は、話し言葉を検索条件に翻訳する。翻訳結果はフォームに入るだけで、検索を実行するのは人
  • 端材は1件の在庫が1枚の板。数量の欄がなく、枚数は行数で数えるので、どの1枚が使えるかが行単位で分かる
  • 登録すると「登録日+その日の連番」の在庫番号が自動で付く(例:20260830-013)
  • 端材指示書は板1枚を選び、図番と員数を書いたA4を発行する。発行と同時にその板が予約ありになるので、二重取りが起きない
  • 現場ではAndroidアプリかスマートフォンのブラウザで指示書QRと材料QRを読んで照合する。バーコードリーダーにも対応している
  • 切った残りは元の板を選んで登録する。元の板は使用済になり、材質・板厚・ロット番号が引き継がれる
  • 重量は横×縦×板厚×比重、金額は重量×キロ単価で自動算出される。単価が未設定なら「-」と表示される

読み取りも翻訳も、入力の手間を減らすためのものです。加工できるかどうかの判断は、人が寸法を確認し、現物を見て決めます。画面に出た候補は、その寸法が収まるという意味であって、加工の保証ではありません。

この線引きには理由があります。加工できるかどうかを決める条件のうち、台帳に載せられるのは寸法と材質と板厚だけです。傷の位置、以前の加工で空いた穴、反り、目の向き。こうした条件は現物にしか無く、写真に撮っても判断しきれません。台帳が持てる情報の範囲を超えた判断を自動化すると、間違った候補を正しい候補として提示することになります。それは、候補を出さないことより悪い結果を生みます。

同じ理由で、在庫を自動で予約する動きも入れていません。検索して出てきた板を、システムが勝手に押さえてしまうと、現場が現物を見て「これは使えない」と判断したときに、押さえた記録だけが残ります。押さえられた板は他の人の検索から消えるので、実際には使える板が誰にも見えなくなります。押さえる操作は、人が使うと決めたときにだけ実行されます。

定尺材の側は、1行が材質と寸法の組み合わせで枚数を持ちます。現物の枚数、引き当て済みの枚数、引き当て可能な残り、入庫予定、安全在庫、欠品予定日、発注する日が並びます。展開寸法を出した結果、端材では取れないと分かったときに、定尺材が何枚約束できる状態にあるかをその場で確認できます。判断に効くのは現物の枚数ではなく、引き当て可能な残りのほうです。

定尺材と端材は同じ材質マスタでつながっているので、材質と板厚の書き方が2つの台帳でずれることがありません。全体像は定尺材・端材管理の機能ページにまとめています。展開寸法を図番と紐づけて再利用する考え方については図番とはもあわせてご覧ください。

展開寸法を正しく出し、その値で材料を選べるようにすることは、切り直しを減らすだけの話ではありません。見積の材料費が実態に近づき、値上げ交渉の根拠が持てるようになります。導入や機能の詳細はFactory Advance の公式サイトをご覧ください。板金加工業を含む個別受注生産の現場でどう使われているかは、製品紹介資料にまとめています。

まとめ

要点を整理します。

  • 展開寸法とは、曲げる前の平らな状態での板の寸法である。図面に描かれているのは曲げ終わった完成品の寸法であり、両者は別の数字である
  • 曲げると外側は伸び、内側は縮む。展開したときの長さは、伸びも縮みもしない中立面に沿った長さで決まる
  • 展開長は、外側寸法の合計からベンド控除を引いて求める。直線部の合計に伸び代を足す求め方と結果は同じである
  • K係数の値を他社の資料から借りてはいけない。材質・板厚・曲げ半径・金型で変わるので、自社のテストピースで実測して表にする
  • 展開寸法は誰が出すかと、どこに残すかを決める。図番に紐づけて残せば、2回目以降の再計算がなくなる
  • 端材と突き合わせるのは展開寸法ではなく必要寸法である。掴み代・切り代・部品間隔を足した値で判断する
  • 掴み代・切り代・部品間隔の数字は自社の設備で決まる。他社の値を借りると、使える端材を落とすか、切ってから加工できないかのどちらかになる
  • 切り直しで失われるのは材料費だけではない。投入済みの加工費、探し直す時間、そして納期が同時に失われる
  • 対策を打つかどうかは増分で判断する。まず切り直しの件数を1か月数え、会社全体でいくら失っているかを出す

展開寸法は、板金加工の技術の話に見えて、実際には情報の受け渡しの話です。誰が出した値を、誰が、いつ見るのか。ここが決まっていない限り、計算の精度をいくら上げても切り直しは減りません。逆に、値が1か所にあって全員が見られる状態になれば、精度の改善はそこから積み上げられます。

まず、よく使う材質と板厚を1つ選んで、テストピースを1枚曲げてベンド控除を実測してください。

参考文献

よくある質問

展開寸法と完成品寸法は何が違うのですか。
展開寸法は曲げる前の平らな状態での板の寸法で、完成品寸法は曲げ終わったあとの寸法です。曲げると外側は伸び、内側は縮むため、外側寸法を単純に足し合わせた値より短い板で足ります。図面に描かれているのはたいてい完成品寸法なので、展開寸法は加工する側が出す必要があります。
K係数はいくつを使えばいいですか。
一般的な値をそのまま使わないでください。K係数は材質、板厚、曲げの内側半径、金型のV幅、曲げ方によって変わります。自社でよく使う材質と板厚のテストピースを、実際に使う金型と角度で曲げて実測し、その値を表にして残すのが確実です。数枚曲げて平均を取ると精度が安定します。
図面に展開寸法が書かれていません。どうすればいいですか。
出し方は3つあります。板金向けCADの展開機能を使う、自社のベンド控除の表から手計算する、テストピースで実測する、のいずれかです。CADを使う場合は、設定してある補正値が自社の実際の曲げと合っているかを確認してください。初期値のままでは実物と合いません。
端材から取れるかは展開寸法で判断していいですか。
展開寸法のままでは足りません。掴み代、切り代、複数個取るときの部品間隔を足した必要寸法で判断してください。この3つの値は使っている設備で決まるので、他社の数値を借りると、使えるはずの端材を落とすか、切ってから加工できないことが分かるかのどちらかになります。
展開寸法はどこに残しておけばいいですか。
図番と紐づけて残してください。材質、板厚、内側半径、曲げ角度、曲げ回数、補正値の出どころも一緒に残します。同じ図番の部品を次に作るときに再計算がいらなくなります。図面が改訂されたら展開寸法も無効にしてください。古い値が残っているほうが、値が無いより危険です。

投稿者プロフィール

尾畠 悠樹
尾畠 悠樹
株式会社イーポート 代表取締役

■ ITコーディネーター
■ キャッシュフローコーチ®
■ JRCA認定ISMS審査員補
■ 東京都中小企業向け
  デジタル技術導入促進ナビゲーター
■ 中小企業庁「みらデジ」デジタル化支援者

兵庫県出身。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーを経て2008年に会社設立。業務用システムの受託開発及び中小製造業向けのパッケージの開発・販売を行う。