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端材管理のやり方|板金の端材を1枚ずつ数えて使い切る仕組み

「この板、まだ使えるやつだよな」。棚の前でそう言いながら、結局その日も新しい定尺材を開けた。そんな場面が月に何度もあるなら、問題は現場の意識ではなく、端材が「探せる形」で管理されていないことにあります。端材は在庫でありながら、1枚ずつ形が違い、数量でまとめられず、置き場と台帳が簡単にずれます。本記事では、板金加工業の端材管理について、残す基準の決め方から1枚単位の数え方、台帳と現物の結び方、寸法での探し方、二重取りを防ぐ引き当て、そして眠っている端材の金額換算までを扱います。

端材管理とは何か

端材管理とは、定尺材から部品を切り出したあとに残った板を、次の仕事で使える状態にして保管し、必要なときに見つけ出して消し込むまでの一連の管理を指します。廃棄を減らすための活動と誤解されがちですが、目的は処分量の削減ではありません。目的は、買わなくてよい材料を買わないことと、探す時間を減らすことの2つです。

一般的な在庫管理と端材管理は、扱う対象の性質が根本的に違います。ボルトやワッシャーのような購入品は、同じ品目が同じ形で何個もあります。だから「SUS M8×20 が240本」と数量で管理でき、120本使えば120本減る、という単純な引き算が成り立ちます。端材は違います。1枚として同じものがありません。材質と板厚が同じでも、420×310の板と680×290の板は別物です。前者で取れる部品が後者では取れないことがあり、その逆もあります。数量でまとめた瞬間に、管理の意味が失われます。

もう一つの違いは、端材が「増える理由」が社内にあることです。購入品は発注しなければ増えません。端材は、仕事をすれば必ず増えます。切れば残りが出るからです。放っておくと増え続ける在庫であり、しかも増えるスピードは受注量に比例します。忙しい会社ほど端材が溜まるのはこのためです。

そして端材には、購入品にはない性質があります。使うたびに姿が変わることです。800×600の端材から400×300を1枚取ると、その端材はもう800×600ではありません。残った形をどう記録するかを決めておかないと、台帳の寸法と棚の現物が1回の加工で食い違います。端材管理の設計は、この「使ったあとどうするか」を先に決めるところから始まります。

一般的な在庫管理システムで端材が扱いにくいのも、この3つの性質が理由です。多くの在庫管理は「品目コード」と「数量」の組で成り立っています。端材にはその両方が当てはまりません。品目コードを振ろうとすれば、寸法の組み合わせの数だけコードが必要になります。数量でまとめようとすれば、どの1枚が使えるのか分からなくなります。端材を扱うには、品目と数量ではなく、板1枚を1件として扱う設計が必要です。

管理の担当を誰にするかも、最初に決めておく必要があります。端材が出るのは加工現場ですが、金額を見るのは経営です。登録する人と、棚を見直す人と、金額を見る人が分かれていて構いません。むしろ登録を現場だけの仕事にして、棚の見直しと処分の判断を誰も持たないままにすると、棚は増える一方になります。月に1回、滞留している板を一覧で見て処分を判断する人を決めておいてください。

端材管理を始める動機は会社によって違います。材料費が上がって仕入の負担が重くなった、棚が溢れて通路が狭くなった、材料の手配が間に合わず納期が遅れた。どの動機で始めても構いませんが、何をもって成功とするかは最初に決めてください。処分量を減らすことが目的なのか、定尺材の購入枚数を減らすことが目的なのか、探す時間を減らすことが目的なのかで、力を入れる場所が変わります。処分量を減らしたいなら残す基準の設計が効きます。購入枚数を減らしたいなら探し方の設計が効きます。探す時間を減らしたいなら置き場とラベルの設計が効きます。3つ全部を同時に狙うと、どれも中途半端になります。

端材が使われずに溜まる3つの理由

端材が使われない会社の多くは、担当者を決めていないわけでも、棚がないわけでもありません。管理の鎖のどこかに切れ目があるだけです。切れ目は次の3か所のいずれかに現れます。

1つめは、現物と台帳の切れ目です。棚に板はあるのに台帳に載っていない、あるいは台帳にはあるのに棚にない。この状態が続くと、現場は台帳を見なくなります。台帳を見ないから登録もしなくなり、ずれがさらに広がります。原因はたいてい登録の手間です。切ったあと、事務所まで戻ってExcelを開いて行を追加する、という運用は、忙しい日の午後には必ず飛ばされます。登録は板を置く場所でその場で終わらないと続きません。

2つめは、台帳と加工可否の切れ目です。台帳に「SPCC t1.6 620×450」と書いてあっても、それだけでは目当ての部品が取れるかどうか判断できません。掴み代が要るのか、切り代をいくつ見るのか、目方向の指定があるのか。台帳が寸法しか持っていないと、現場は結局棚に行って現物を見ることになります。見に行く手間が発生するなら、最初から新しい板を出したほうが早い、という判断になります。台帳は「見に行かなくても候補を絞れる」情報量を持たないと使われません。

3つめは、使用後の未更新です。端材を使ったのに台帳がそのまま残っている。これが一番たちが悪い切れ目です。台帳上は在庫があることになっているので、別の人が同じ板を当てにして計画を立てます。当日棚に行くと板がない。1回でも空振りすると、その人はもう端材台帳を信用しません。信用を失った台帳は、更新されないまま放置され、やがて誰も見なくなります。

3つの切れ目に共通するのは、どれも「1回のずれ」で信用が壊れる点です。端材管理は、精度を95%に上げる活動ではなく、ずれが起きない手順に変える活動だと考えてください。

この違いは運用の設計に直結します。精度を上げる発想だと、対策は「気をつける」「チェックする」「月末に棚卸しして合わせる」になります。どれも人の注意力に依存しているので、忙しくなると効かなくなります。手順を変える発想だと、対策は「登録しないと切れない」「予約しないと出庫できない」という形になります。注意力ではなく順序で担保するので、忙しい日でも同じ結果になります。

もう一つ、溜まる理由として見落とされやすいのが置き場の設計です。棚が加工機から遠い、板が縦に立てて差してあって奥が見えない、重い板が上にある。こうした物理的な条件は、台帳をどれだけ整えても改善されません。探すのに時間がかかる置き方をしていると、台帳で候補が出ても現物にたどり着くまでが億劫になります。台帳の整備と置き場の整理は、どちらか一方だけでは効果が出ません。

だから最初にやるべきは台帳作りではありません。台帳を作る前に、載せるものを減らすところから始めます。

何を残すかを先に決める

端材管理でつまずく最大の原因は、出た端材を全部残そうとすることです。全部残せば台帳の行数が増え、棚が埋まり、探すのに時間がかかり、結局使われません。管理コストだけが増えて効果が出ないので、半年で運用が止まります。

先に決めるべきは、「残さない基準」です。残す基準ではありません。残す基準から考えると、どの板にも「いつか使うかもしれない」という理由が付いてしまうからです。残さないものを機械的に決めておけば、判断に迷いが出ません。

基準は自社の受注内容から逆算します。過去半年の図面を並べて、実際に切った部品の外形寸法の分布を見てください。最も小さい部品より小さい端材は、どれだけ残しても使い道がありません。同じように、過去に一度も使っていない材質や板厚の端材は、残しても在庫になるだけです。

残す・残さないを決める観点と、決め方の例
観点 何を見て決めるか 決め方の例
大きさの下限 過去半年で切った部品の最小外形 短辺が自社の最小部品の短辺に掴み代と切り代を足した値を下回る板は残さない
材質・板厚 直近の受注で使った材質と板厚の頻度 過去1年で使用実績のない材質・板厚は、その場で処分に回す
形状 矩形として使えるかどうか 矩形で取り直せない板は残さない。台帳が持てるのは縦横の2辺だけだと割り切る
表面状態 傷・錆・保護フィルムの有無 外観指定のある製品に使えない板は、内部部品専用として別置きにするか残さない
保管期間 入庫からの経過月数 一定か月を過ぎても動かない板は、残す判断を一度やり直す

この表の数字は自社で埋めてください。他社の基準をそのまま持ってきても機能しません。基準を決める作業そのものが、自社が何を作っている会社なのかを言語化する作業になります。

基準を決めたら、棚に貼ってください。切ったその場で判断できないと意味がないからです。判断が現場の裁量に委ねられている限り、迷った板は「とりあえず残す」に流れます。基準は、迷いを消すために作ります。

運用を始めるときに必ず問題になるのが、すでに棚にある板の山です。ここを一枚ずつ登録しようとすると、初日で挫折します。順序を逆にしてください。まず基準に照らして、残さないものを抜きます。抜いた板は処分に回します。残った板だけを登録します。登録する前にふるいにかけるので、初期登録の枚数が現実的な数に収まります。

抜く作業は一日で終わらせる必要はありません。ただし、いつ終わるかは決めてください。終わりを決めないと、棚に「判定済みの板」と「未判定の板」が混在した状態が続き、検索した候補が信用できなくなります。登録済みの板だけを置く棚と、未判定の板を置く場所を物理的に分けて、未判定の場所が空になった時点で運用開始とするのが確実です。

基準は一度決めたら固定、ではありません。受注の内容が変われば、使える板の下限も変わります。半年に一度、実際に使われた端材の寸法分布と、処分した端材の寸法分布を見比べてください。処分した板の寸法帯に使われた板が混ざっていないなら、下限をもう少し上げられます。逆に、下限ぎりぎりの板が頻繁に使われているなら、下限は適切です。

材質と板厚の絞り込みも同じ考え方で見直します。使う材質が5種類、板厚が6種類あれば、組み合わせは30通りです。この30通り全部の端材を持とうとすると、どの組み合わせも少しずつしか揃わず、探しても目当てのものが無い状態が続きます。よく使う組み合わせを上位から数えて、受注の大半を占める範囲だけを端材として残す、という決め方もあります。残す組み合わせを絞るほど、1つの組み合わせあたりの枚数が増え、探して見つかる確率が上がります。端材が使われるかどうかは枚数の多さではなく、必要な組み合わせが揃っているかで決まります。

なお、この絞り込みは定尺材の持ち方とセットで考える必要があります。端材として残す組み合わせを絞れば、そこから外れた仕事は定尺材から切ることになり、定尺材の在庫が増えます。逆に定尺材の種類を減らせば、端材で賄う場面が増えます。どちらか一方だけを見て決めると、もう一方が膨らみます。定尺材と端材を同じ材料の在庫として並べて見る考え方は、定尺材・端材管理のページに整理しています。

端材は数量ではなく1枚ずつ数える

端材台帳を作るとき、多くの会社が最初に「SPCC t1.6 中サイズ 12枚」のような書き方をします。これは購入品の管理方法をそのまま持ち込んだ形で、端材では必ず破綻します。理由は単純で、12枚のうちどれが目当ての部品を取れるのか、この行からは分からないからです。

端材は、1件の在庫が1枚の板である、と決めてください。数量の欄は作りません。枚数は行数で数えます。SPCC t1.6 の端材が12枚あるなら、台帳には12行あります。この形にすると、次の3つが同時に成立します。

  • 1行が1枚の板を指すので、寸法・材質・板厚を行ごとに正確に持てる
  • 「この板を使う」という予約が、板1枚に対して1件だけ立つ。二重取りが構造的に起きない
  • 使い切ったら行が消える。数量を減算する作業がないので、引き算の間違いが発生しない

行数が増えることを心配する必要はありません。前の章で残さない基準を決めているので、増え方は制御されています。むしろ行数がそのまま「棚に何枚あるか」を表すので、在庫量の把握が正確になります。

1枚ずつ数えるようにすると、板を識別する手段が必要になります。板ごとに固有の番号を振り、その番号を板そのものに貼るのが確実です。番号の付け方は、人が意味を読み取れる形にしておくと運用が楽になります。たとえば登録日と、その日の連番を組み合わせて「20260830-013」とすれば、番号を見ただけでいつ棚に入った板か分かります。番号を手で考えて振ると必ず重複するので、登録した瞬間に自動で採番される仕組みにしてください。

ラベルには何を載せるかも先に決めます。載せすぎると貼る作業が重くなり、少なすぎると現物照合ができません。実務で必要なのは、QRコード・在庫番号・材質・板厚と縦横の寸法・登録日の5つです。この5つがあれば、棚の前で板を見た人が、それが何の板でいつからあるのかを判断できます。ラベルはラベルプリンターで貼るのが早いですが、台数がないうちはPCからA4に印刷して切って貼る運用でも回ります。

ラベルを貼る位置も決めておきます。棚に差した状態で見える位置、つまり短辺側の端から数センチの位置に、全員が同じ向きで貼るのが基本です。位置がばらばらだと、探すたびに板を引き出すことになります。引き出す手間が発生すると、その手間を惜しんで現物確認が省略されます。

貼る作業そのものが負担になる場合は、板の大きさで運用を分けても構いません。頻繁に動く大きめの板にはラベルを貼り、下限に近い小さな板はまとめて一つの箱に入れて箱にラベルを貼る、という方法もあります。ただし箱にまとめた時点で、その中の板は1枚ずつ探せなくなります。まとめるかどうかは、その寸法帯の板が実際にどれだけ使われているかを見て決めてください。

在庫番号を人が読む場面も残しておきます。QRコードが汚れて読めないことは現場では普通に起きます。番号が印字されていれば、手入力で台帳を引けます。機械が読める形と人が読める形の両方を載せておくことが、現場で止まらない仕組みの条件です。

台帳に持たせる項目と、現物との結び方

台帳が使われない一番の理由は、項目が足りないことです。逆に、項目が多すぎると入力が終わらず、登録されない板が出ます。入力が30秒で終わり、かつ棚に行かずに候補を絞れるという2つを両立させる項目立てを考えます。

端材台帳に持たせる項目と、その項目が必要な理由
項目 役割 これが無いと起きること
在庫番号 板1枚を一意に指す 似た寸法の板を取り違える。指示と現物を照合できない
材質 加工可否と後工程の可否を決める 寸法だけで選び、めっき・溶接の工程で戻される
板厚 図面との一致を判定する 板厚違いに気づかず切る。切ってから分かるので材料も時間も戻らない
横・縦(mm) 部品が収まるかを機械的に判定する 大・中・小のような区分では検索できず、結局棚を見に行く
目方向の有無 90度回して使えるかを決める 回して取れるはずの板を候補から落とす。あるいは回してはいけない板を回す
ロット番号 材料証明の要求に応える ミルシートの提出を求められたときに端材を使えない
登録日 滞留を測る起点にする いつからある板か分からず、処分の判断ができない
状態 使えるか、押さえられているかを表す 別の人が同じ板を当てにする。当日になって空振りする
置き場 探す範囲を絞る 台帳で見つけても現物にたどり着けない

寸法は必ずmmの数値で持ってください。「大」「中」「小」や「半分くらい」は、あとから検索できません。検索できない項目は、書いても読まれない項目です。

台帳と現物を結ぶのは、板に貼ったラベルのQRコードただ一つにします。結び方を複数用意すると、どちらが正なのか分からなくなります。棚番号で結ぶ方式は一見わかりやすいのですが、板は動きます。誰かが手前の板を奥にずらした瞬間に、台帳と現物の対応が壊れます。板そのものに識別子が貼ってあれば、板がどこに移動しても対応は壊れません。

置き場の持ち方には注意が必要です。置き場は台帳と現物を結ぶ鍵ではなく、探す範囲を絞るための補助情報として持ちます。「A棚3段目」と書いてあれば、A棚だけ見ればよいので現物確認が早く終わります。ただし、そこに無かったからといって板が消えたことにはなりません。誰かが動かしただけです。置き場が合っていなくても、板のラベルさえ生きていれば管理は壊れないという設計にしておいてください。

ロット番号は、要求される会社とされない会社があります。材料証明の提出を求められる仕事が一件でもあるなら、最初から持たせてください。あとから追加すると、既存の板にロット番号を振れず、端材が証明の要る仕事に使えないまま残ります。逆に、証明を求められる仕事が無いなら、入力項目を1つ減らしたほうが登録が続きます。

登録のタイミングも決めておきます。原則は「切って残りが出た、その場で登録する」です。あとでまとめて登録する運用にすると、まとめる作業が発生した時点で、それは誰かの仕事になります。誰かの仕事は忙しい日に飛ばされます。その場で登録するには、加工機の横で登録できる端末が要ります。スマートフォンやタブレットのブラウザから登録できれば十分です。

入力を速くする工夫も要ります。材質と板厚は、毎回文字で打たせるとばらつきます。「SPCC」「spcc」「SPCC材」が別物として登録されると、検索で引っかからない板が出ます。材質と板厚は選択式にして、自由入力を許さないのが確実です。寸法だけを数値で入れる形にすれば、登録は本当に数十秒で終わります。

切った残りを記録する(親子関係)

端材管理でもっとも設計を間違えやすいのが、使ったあとの記録です。800×600の端材から400×300を取ったあと、残った板をどう扱うか。ここを決めていないと、台帳の寸法と現物が最初の1回でずれます。

正しい扱い方は、「元の板は使い切ったことにして、残った板を新しい1枚として登録し直す」です。元の板の寸法を書き換えるのではありません。書き換え方式には2つの問題があります。1つは、切り方によって残りが1枚とは限らないこと。L字に残る場合、矩形として取り直せる部分がどこかを人が決める必要があります。もう1つは、書き換えると履歴が消えることです。この板がどこから来たのか分からなくなると、材質やロットの追跡ができません。

そこで、元の板を選んでから新しい板を登録するという順序にします。この順序にすると、次の3つが自動的に決まります。

  • 元の板の状態が「使用済」に変わり、検索の候補から自動的に外れる。使ったのに残り続ける事故が消える
  • 新しい板が材質・板厚・ロット番号を元の板から引き継ぐ。入力し直さないので転記ミスが起きない
  • 親子関係が残るので、どの定尺材から出た板なのかを後からたどれる

L字や穴の空いた形で残った場合は、その中から矩形として取り直せる範囲を人が決めて、その寸法で登録します。実際より小さめに申告することになりますが、それで構いません。台帳の寸法は「確実にこの寸法は取れる」という保証値であるべきで、実際より大きく登録すると、あとで取れなかったときに信用を失います。台帳は控えめに、現物は現場で判断するという役割分担にしておくと運用が安定します。

具体的な流れで見ます。定尺材から切り出して、800×600の端材が出たとします。この板を「20260830-013」として登録します。翌週、この板から420×310の部品を取ることになりました。指示書を出して板を押さえ、切ります。残ったのが概ね800×280の帯状の板だったとします。ここで、20260830-013を親として新しい板を登録します。寸法は800×280。材質・板厚・ロット番号は自動で引き継がれます。20260830-013は使用済になり、検索の候補から消えます。この一連の操作が1回で終わることが、運用が続くかどうかの分かれ目です。

残った板が基準を下回るなら、登録せずに処分に回します。この判断も切ったその場で行います。「あとで見て決める」を許すと、判断待ちの板が棚を占領します。

親子関係を残しておくと、あとから効いてくる場面があります。ある製品で材料の不具合が見つかったとき、同じロットの板がどこまで広がっているかを追えます。定尺材から出た端材、その端材から出た端材まで一本の線でつながっているので、どの製品に使われた可能性があるかを台帳から特定できます。紙の台帳では現実的に追えない範囲です。

使える端材の探し方は3段階

端材が使われるかどうかは、探す作業が何分で終わるかで決まります。探すのに5分かかるなら、定尺材を1枚開けたほうが早いと判断されます。探す作業を3段階に分けて、それぞれを短くします。

第1段階は、材料条件で絞ることです。図面から材質と板厚を読み、その組み合わせの端材だけを取り出します。ここで大半が消えます。材質と板厚が違えば、寸法がいくら合っていても使えないからです。目方向の指定がある材料なら、この段階で方向の条件も加えます。

第2段階は、寸法で絞ることです。必要な部品の展開寸法に、掴み代・切り代・部品間隔を足した値を出し、それが収まる板だけを残します。ここで重要なのは、収まる板のうち面積の小さいものから順に見ることです。大きい板から使うと、大きい端材が減って小さい端材だけが残ります。小さいものから使えば、大きい板が次の仕事のために残ります。

目方向の指定がない材料なら、90度回した場合も候補に入れます。420×310の部品に対して、350×450の板は縦横そのままでは入りませんが、回せば入ります。この判定を人がやると必ず見落とすので、寸法で検索する仕組み側に持たせてください。

第3段階は、現物確認です。候補が出たら、棚に行って板を見ます。傷、錆、反り、以前の加工で空いた穴の位置。これらは台帳には載っていません。画面に出た候補は「寸法が収まる」という意味であって、加工できることの保証ではありません。ここを混同すると、候補を信じて計画を立て、当日になって使えないことが分かる、という失敗が起きます。

3段階それぞれにかかる時間の目安も決めておきます。第1段階と第2段階は画面の操作なので、合わせて1分以内に終わるはずです。第3段階は棚までの距離と置き方で決まります。3段階の合計が定尺材を1枚出す時間より短くなければ、端材は使われません。ここは精神論ではなく、時間の比較です。

3段階に分けておく効果は、どこで時間がかかっているかが分かることです。第1段階に時間がかかるなら材質・板厚の入力が甘い。第2段階で候補がゼロばかりなら、残す基準が実態と合っていない。第3段階で落ちる板が多いなら、台帳に持たせる項目が足りていません。探す時間を測っておくと、どこを直せばよいかが数字で分かります。

探す順序を「小さいものから」に固定することには、もう一つ効果があります。棚に残る板の大きさが揃っていくのです。大きい板から使う運用だと、小さい板ばかりが積み上がり、やがてどれも使えない山になります。小さい板から使えば、下限に近い板が先に消費され、棚の中身が入れ替わり続けます。使い切る仕組みとは、大きい端材を守る仕組みでもあります。

もう一つ、探すときに必ず確認しておきたいのが、その仕事が端材を許すかどうかです。材料証明の提出が要る、外観の指定が厳しい、板の目方向が指定されている。こうした条件がある仕事では、寸法が合っていても端材を使えません。図面や注文書を受け取った段階でこの判定を済ませておけば、探す作業そのものが発生しません。探す前に、探す必要があるかを確かめるのが最初の手順です。

なお、探し方を人に依存させないことも大切です。話し言葉で「1.6のSPCCで400角が取れるやつ」と入力したら検索条件に翻訳される、あるいは図面のPDFから材質・板厚・展開寸法を読み取って候補を出す、といった補助があると、探せる人が特定の1人に固定されなくなります。ただし、翻訳や読み取りの結果はそのまま採用せず、人が確認・修正してから検索を実行する手順にしてください。読み取りは入力の手間を減らすためのものであって、判断を代行させるものではありません。判断は寸法の突き合わせと現物確認で行います。

二重取りを防ぐ引き当て

端材管理を導入した会社が最初につまずくのが、同じ板を2人が当てにする事故です。AさんもBさんも同じ画面を見て、同じ620×450の板を「これで取れる」と判断します。先に棚へ行ったほうが持っていき、あとから行ったほうが空振りします。定尺材なら「もう1枚出す」で済みますが、端材は同じものが二度と手に入りません。

防ぎ方は、板を押さえる操作を必ず経由させることです。板は次の状態を移ります。

  • 在庫:誰も押さえていない。検索の候補に出る
  • 予約あり:特定の仕事に押さえられている。検索の候補から外れる
  • 使用済:切って出庫された。もう存在しない
  • 廃棄:使わずに処分した。もう存在しない

重要なのは、出庫は必ず予約を経由するという一点です。在庫からいきなり使用済にできる抜け道を作ると、その抜け道が使われます。急いでいるときほど使われます。予約を必須にしておけば、押さえた瞬間に他の人の検索結果から消えるので、二重取りが構造的に起きません。

状態を4つに絞っているのも理由があります。状態が増えるほど、現場は「今どれを選べばいいのか」で迷います。「保留」「確認中」「仮押さえ」といった中間の状態を作りたくなりますが、中間状態は必ず滞留します。誰も次に進めないまま残り、検索の候補からは外れているので、実質的に死蔵在庫になります。使えるか、押さえられているか、無くなったか。この3つが判別できれば運用は回ります。

押さえる操作を現場の負担にしないために、指示書の発行と予約を同じ操作にするのが実務的です。板を1枚選び、図番と員数を書いた指示書を発行する。発行と同時にその板が予約ありに変わる。こうすれば、現場が「予約を忘れる」ことがなくなります。予約の操作が別にあると、必ず忘れる人が出ます。

出庫のときは、指示書と板の照合を機械にやらせてください。指示書のQRコードと板のQRコードを読んで、一致したときだけ出庫が成立する。人が目視で番号を突き合わせる運用は、似た番号が並んだときに必ず間違えます。読み取りはスマートフォンのブラウザでもできますし、専用のバーコードリーダーがあれば片手で終わります。照合を1操作にしておくと、忙しい日でも省略されません。

予約したまま使わなかった板の扱いも決めておきます。仕事が延期になった、図面が変わった、別の板を使うことにした。理由は何でもよいのですが、予約を解除する操作がないと、押さえられたまま誰にも使えない板が増えます。予約の一覧を週に一度見て、指示書が発行されてから一定期間動いていないものを洗い出す運用にしてください。数が少ないうちは目視で足ります。

予約を経由する運用にすると、副次的な効果もあります。どの板がどの仕事に使われたかが記録として残ります。案件ごとの材料費を集計するとき、定尺材だけでなく端材で賄った分も含めて原価が見えるようになります。端材だから材料費ゼロ、という扱いにしてしまうと、その案件の利益が実態より良く見えます。買ってきた板であることに変わりはないので、金額を持たせて原価に乗せてください。

見積のときも同じです。端材で作れる見込みがあるからといって、見積の材料費を下げてしまうと、実際には端材が無くて定尺材から切ったときに、その案件は最初から赤字になります。見積は定尺材から切る前提で組み、端材で賄えたときの差額は実績側で拾うのが安全です。端材が使えたかどうかは、切る直前まで確定しません。確定しないものを見積の前提に入れると、見積の精度が下がります。

引き当ての考え方は、定尺材の在庫でも同じです。現物が何枚あるかより、まだ約束できる枚数が何枚あるかのほうが判断に効きます。この考え方は購入品の在庫でも共通で、発注のタイミングを決める仕組みと合わせて設計すると効果が出ます。詳しくは発注点管理の仕組みと安全在庫の計算方法で扱っています。端材と定尺材をまとめて扱う考え方は定尺材・端材管理のページに整理しています。

眠っている端材はいくらの在庫になっているか

端材管理を「もったいないから」という理由で進めると、途中で止まります。もったいないは感覚なので、優先順位を他の課題と比べられないからです。金額に換算すると、端材は在庫であり、資金が止まっている場所だと分かります。

端材1枚の金額は、次の2段階で出せます。

  • 重量(kg)= 横(m)× 縦(m)× 板厚(m)× 比重(kg/m³)
  • 金額(円)= 重量(kg)× キロ単価(円/kg)

比重は材質で決まります。鋼は約7,850kg/m³、アルミは約2,700kg/m³、ステンレスは約7,930kg/m³が目安です。キロ単価は自社の仕入価格を入れてください。市況で動くうえ、材質・板厚・数量・仕入先で変わるので、外から持ってきた数字を当てはめても意味がありません。

計算例を1つ置きます。以下の単価は計算の手順を示すための仮の値であり、実際の相場ではありません。自社の直近の仕入伝票から単価を拾って置き換えてください。

端材の在庫金額の試算(単価は仮の値。自社の仕入単価に置き換えて計算する)
項目 値 計算
板1枚の寸法 t1.6 × 600 × 900 mm 0.0016 × 0.6 × 0.9 = 0.000864 m³
重量 約6.8 kg 0.000864 × 7,850 = 6.78 kg
1枚の金額 約1,020円 6.78 × 150(仮のキロ単価)= 1,017円
棚に300枚あると 約30万円 1,017 × 300 = 305,100円
半分が使われないまま処分 約15万円が費用になる 305,100 × 0.5 = 152,550円(スクラップ売却分を除く)

金額を出す作業は、1枚ずつ寸法を持っているからできることです。「中サイズ12枚」という台帳からは金額が出せません。1枚ずつ数えることの効果は、探せるようになることだけではなく、在庫として金額で語れるようになることにあります。

ただし、この金額を見て「端材を全部使い切ろう」と走るのは早計です。判断は会社全体で見てください。端材を無理に使うために段取り替えが増え、加工時間が延びるなら、浮いた材料費より失った時間のほうが大きいことがあります。時間あたりで生み出せる付加価値は、材料費の節約より大きいことが多いからです。

判断は増分で見ます。端材を使う場合と定尺材を使う場合で、増える費用と減る費用だけを比べます。比べる項目は、材料費の差、段取り時間の差、加工時間の差、不良になったときのやり直し費用の4つです。この4つを足し引きして有利なら端材を使う、不利なら定尺材を使う。棚の板を減らすこと自体は目的ではありません。

同時に、端材が減らない状態を放置するコストも見てください。棚の面積、探す時間、そして「探したけれど無かった」という空振りの回数。これらは伝票に出てこない費用ですが、確実に発生しています。金額換算は、伝票に出てこない費用を経営の土俵に乗せるための作業です。

滞留の見方も決めておきます。入庫日からの経過月数で在庫を並べ、一定か月を超えた板を一覧にします。区切りは自社で決めますが、受注の周期より長い期間を設定しないと意味がありません。年に1回しか来ない仕事があるなら、6か月で切ると使う予定のある板まで処分候補に入ります。逆に毎月似た仕事が来る会社なら、3か月動かない板は今後も動きません。

滞留の一覧は、処分するために見るのではありません。なぜその寸法帯の板が動かないのかを考えるために見ます。動かない寸法帯が毎回同じなら、残す基準がその帯を拾ってしまっている、という意味です。基準を直せば、来月から同じ板が増えなくなります。処分は結果の後始末であって、原因への対策ではありません。

金額を出す作業をもう一段進めると、端材が在庫全体のどれくらいを占めているかが見えます。定尺材の在庫金額と端材の在庫金額を並べてみてください。端材の割合が大きい会社は、切り方の問題ではなく、残す基準が緩い可能性が高いです。この比較は月に一度で十分ですが、続けると基準を直した効果が数字で確認できます。

Factory Advance での端材管理

Factory Advance は、個別受注生産型の中小製造業向けのクラウド型生産管理システムです。板金加工業の端材については、1件の在庫が1枚の板という考え方をそのまま形にしています。本記事で述べた手順を、そのまま画面上の操作として実行できます。

設計の前提として、判断を自動化していません。どの板を使うかを決めるのは人で、システムがやるのは条件に合う板を漏れなく並べることと、選ばれた板を押さえることです。自動で最適な板を割り当てる方式にすると、現場が納得しない割り当てが混ざったときに、その仕組み全体が使われなくなります。候補を出すところまでを機械に、決めるところを人に置いています。

  • 端材は1件が1枚の板として登録され、数量の欄がない。枚数は行数で数える
  • 登録すると「登録日+その日の連番」の在庫番号が自動で付く(例:20260830-013)。手で採番しないので重複しない
  • QRラベルにはQR・在庫番号・材質・板厚×横×縦・登録日の5つが載る。ラベルプリンター mC-Label2(USB/有線LAN/無線LAN/Bluetooth)から、またはPCからA4に印刷できる
  • 状態は在庫→予約あり→使用済、および在庫→廃棄の4つ。出庫は必ず予約を経由するので、二重取りが構造的に起きない
  • 切った残りは元の板を選んで登録する。元の板は使用済になり、新しい板が材質・板厚・ロット番号を引き継ぐ
  • 重量は横×縦×板厚×比重、金額は重量×キロ単価で自動算出される。単価が未設定なら「-」と表示され、勝手な推定値は入らない
  • 寸法で探すと、収まる板だけが面積の小さい順に並ぶ。目方向の指定がない材料は90度回転も考慮して判定する
  • 言葉で探す機能は、話し言葉を検索条件に翻訳する。翻訳結果はフォームに入るだけで、検索を実行するのは人
  • 図面から探す機能は、PDFや画像から材質・板厚・展開寸法を読み取る。人が確認・修正してから候補を出す
  • 端材指示書は板1枚を選び、図番と員数を書いたA4を発行する。発行と同時にその板が予約ありになる
  • 現場ではAndroidアプリかスマートフォンのブラウザで指示書QRと材料QRを読んで照合し、出庫する。バーコードリーダーにも対応している
  • 入庫から一定か月(既定6か月、1〜120か月で設定可)を過ぎた在庫を長期滞留として集計できる

端材と定尺材は同じ材質マスタでつながっているので、材質・板厚の書き方が2つの台帳でずれることがありません。定尺材の在庫、引き当て可能な残り枚数、入庫予定までを含めた全体像は定尺材・端材管理の機能ページにまとめています。購入品や部品の在庫と合わせて管理したい場合は在庫管理の機能を、図面と品番の対応を整理したい場合は図番とはもあわせてご覧ください。

端材を使い切る仕組みは、材料費を下げるためだけのものではありません。探す時間が減り、空振りが消え、同じ人数で回せる仕事が増えることに本当の効果があります。導入や機能の詳細はFactory Advance の公式サイトをご覧ください。板金加工業を含む個別受注生産の現場でどう使われているかは、製品紹介資料にまとめています。

まとめ

要点を整理します。

  • 端材管理の目的は処分量の削減ではなく、買わなくてよい材料を買わないことと、探す時間を減らすことの2つである
  • 端材が使われない原因は3つの切れ目にある。現物と台帳、台帳と加工可否、そして使用後の未更新である
  • 台帳を作る前に「残さない基準」を決める。全部残す運用は台帳の行数を増やすだけで定着しない
  • 端材は1件の在庫が1枚の板。数量の欄を作らず、枚数は行数で数える
  • 台帳と現物は板に貼ったラベルのQRコード1つで結ぶ。棚番号で結ぶと板が動いた瞬間に壊れる
  • 切った残りは元の板を選んで登録し直す。元の板は使用済にし、材質・板厚・ロット番号を引き継がせる
  • 探し方は材料条件、寸法、現物確認の3段階。画面の候補は寸法が収まるという意味であり、加工の保証ではない
  • 出庫は必ず予約を経由させる。指示書の発行と予約を同じ操作にすれば、現場が予約を忘れない
  • 端材は金額で語れる在庫である。重量と自社のキロ単価から在庫金額を出し、増分で使う・使わないを判断する

まず、過去半年に切った部品の最小外形を調べて、残さない板の下限寸法を1つだけ決めてください。

参考文献

よくある質問

端材管理は何から始めればいいですか。
台帳を作るより先に、残さない基準を決めてください。過去半年に切った部品の最小外形を調べ、それに掴み代と切り代を足した値を下回る板は残さない、というように下限を1つ決めます。基準を決めてから登録を始めれば、台帳の行数が現実的な数に収まり、探しても見つからない状態を避けられます。
端材を数量でまとめて管理してはいけないのですか。
まとめると、その中のどの1枚が目当ての部品を取れるのかが分からなくなります。端材は1枚として同じものがないので、1件の在庫が1枚の板になる形にしてください。数量の欄は作らず、枚数は行数で数えます。この形にすると、予約が板1枚に対して1件だけ立つので、二重取りも構造的に起きません。
台帳と棚の現物がすぐにずれてしまいます。
結び方を1つに絞ってください。板そのものにQRラベルを貼り、そのラベルだけで台帳と対応させます。棚番号で結ぶ方式は、誰かが板を動かした時点で対応が壊れます。あわせて、登録を切ったその場で終わる形にしてください。事務所に戻って入力する運用は、忙しい日に必ず飛ばされます。
同じ端材を2人が当てにしてしまいます。どう防げばいいですか。
出庫の前に、必ず板を押さえる操作を挟んでください。押さえた板は他の人の検索結果から外れるので、二重に当てにされません。押さえる操作を忘れさせないために、指示書の発行と同時に押さえられる形にするのが実務的です。出庫のときは指示書と板のQRコードを読んで照合します。
端材はどのくらいの期間で処分を判断すればいいですか。
自社の受注の周期より長い期間で区切ってください。年に1回しか来ない仕事があるなら、6か月で切ると使う予定のある板まで処分候補に入ります。入庫からの経過月数で並べて一覧にし、動かない板の寸法帯が毎回同じなら、処分より先に残す基準のほうを見直してください。

投稿者プロフィール

尾畠 悠樹
尾畠 悠樹
株式会社イーポート 代表取締役

■ ITコーディネーター
■ キャッシュフローコーチ®
■ JRCA認定ISMS審査員補
■ 東京都中小企業向け
  デジタル技術導入促進ナビゲーター
■ 中小企業庁「みらデジ」デジタル化支援者

兵庫県出身。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーを経て2008年に会社設立。業務用システムの受託開発及び中小製造業向けのパッケージの開発・販売を行う。