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製造業の在庫管理の方法|欠品と余剰を防ぐ手順とシステム投資額

製造業の在庫管理とは、材料・仕掛品・完成品の数量と所在を把握し、欠品と余剰の両方を最小化する仕組みのことです。中小製造業の現場では「あの材料、たぶん奥の棚にあったはず」「決算で在庫金額が3割多かった」という問題が同時に起きます。ここでは、システムを入れずに今日から始められる手順から、自動化でできることとできないこと、投資額の目安までを順に整理します。

製造業の在庫管理とは?

製造業の在庫管理とは、単に「在庫数を数える」ことではありません。いつ・どこに・何が・いくつあり、それが誰のどの案件用なのかを把握し、適切なタイミングで発注・引当・棚卸を回す活動全体を指します。

中小製造業では、紙の伝票・ホワイトボード・Excelで在庫を管理しているケースが今も多く、結果として「欠品で生産が止まる」「余剰在庫がキャッシュフローを圧迫する」という両極端の問題が同時発生しがちです。在庫管理の本質は、この両方を同時に解決する仕組みを作ることにあります。

中小製造業の在庫管理が抱える3つの課題

中小製造業の在庫管理現場では、典型的に次の3つの課題が連動して発生します。

中小製造業の在庫管理が抱える3つの課題
# 課題 現場で起きている症状 経営インパクト
1 在庫の所在が分からない 「あの材料、たぶん奥の棚にある」 材料探しのムダ・欠品緊急発注
2 案件への引当が属人化 担当者しか分からない管理状態 担当者が休むと生産停止
3 実在庫と帳簿在庫がズレる 決算で「想定より3割多い」が判明 棚卸ロス・キャッシュフロー圧迫

これら3つの根本原因は、「在庫データが工番(案件番号)に紐づいていない」という1点に集約されます。受注ごとに必要な材料が違う多品種少量生産では、「この材料は誰の何の案件用なのか」が分からないと現場は混乱します。詳しい工番とはもあわせてご参照ください。

システムを入れずに始める在庫管理

在庫管理を調べ始めた段階で、いきなりシステムを検討する必要はありません。道具を入れる前にやるべきことが3つあり、これだけで欠品の大半は減ります。

1つ目は、置き場を決めて名前を付けることです。 棚に番号を振り、材料ごとに定位置を決める。それだけで「探す時間」が消えます。材料を探している時間は原価に乗りませんが、確実に工数を食っています。

2つ目は、全品目を数えないことです。 品目が500点ある工場でも、金額の8割は上位100点ほどに集中しているのが普通です。まず金額上位2割だけを管理対象にしてください。 残りの8割を同じ精度で追おうとすると、始める前に息切れします。

3つ目は、入出庫をその場で1行書くことです。 日次でまとめて記入しようとすると、必ず抜けます。棚の横に用紙を置き、出した人がその場で書く。ここまでは紙とペンで足ります。

上位2割の品目について、いつ発注するかの基準を決める段階になったら、製造業の発注点管理の仕組み製造業の安全在庫の計算方法で計算方法を扱っています。ここまではExcelでも十分に回ります。

では、どこからExcelでは足りなくなるのか。

手動管理(紙・Excel) システム化(クラウド型生産管理システム)
在庫数を担当者の記憶や紙伝票に依存 受注/出庫/入庫を即時データで反映
案件への引当が口頭・付箋・メモ 受注時に工番に紐づけて自動引当
月末棚卸で大きな差異が発覚 差異を都度検知してリアルタイムで補正
材料費の案件別集計は事後にExcelで再計算 工番に紐づき自動集計、リアルタイムで原価可視化
担当者が休むと在庫情報がブラックボックス 誰でも同じデータを参照できる属人化解消

限界の見極めは、次の3つのどれかに当てはまるかどうかです。在庫を触る人が3人を超えた管理対象の品目が500点を超えた月末の棚卸差異が3ヶ月続けて出ている。ひとつでも当てはまるなら、Excelの更新が現場の動きに追いつかなくなっています。

在庫管理の3つの基本機能

システム化を考える段階になったら、押さえるべき基本機能は3つです。

在庫管理の3つの基本機能
機能 目的 具体的な動作
発注管理 適切なタイミング・数量で材料を仕入れる 在庫水準・リードタイム・使用実績から発注タイミングを決定
引当管理 受注/着工時に必要材料を確保する 案件(工番)に必要材料を紐づけて確保、余剰流用を防止
棚卸管理 実在庫と帳簿在庫を一致させる 定期/循環棚卸で差異を検出し原価へ反映

中小製造業で特に効果が大きいのは 「引当管理」 です。発注は経験で何とか回せても、引当が曖昧だと「同じ材料をA案件用に確保したつもりがB案件で使われていた」というすれ違いが発生します。これが欠品の最大原因のひとつです。

材料引当の自動化でできること・できないこと

中小製造業の在庫管理で最大の改善余地があるのが 「材料引当の自動化」 です。受注を登録した瞬間に、その案件に必要な材料を在庫から自動で引き当てる仕組みを持つと、在庫管理は大きく楽になります。

受注から消費までの在庫データ一気通貫フロー
受注登録
工番に必要材料を自動引当
不足分を発注
入庫処理
工程で消費

このフローが回ると、欠品の早期検知ができます。受注登録の瞬間に「現状在庫では不足する」が見えるため、納期影響が出る前に手が打てます。同時に余剰の抑制にもつながります。「とりあえず多めに発注しておく」が不要になるためです。さらに引当データが工番に紐づくので、製造原価の材料費が決算を待たずに把握でき、採算管理の精度が一段上がります。

一方で、自動化しても解決しないことがあります。 ここを期待しすぎると、導入後に落胆します。

  • 需要予測はできません。 個別受注生産では過去の実績が繰り返されないため、予測の前提が成り立ちません
  • 現物と帳簿のズレは自動では直りません。 棚卸は人が数える作業として残ります
  • 発注点や安全在庫の数値そのものは決めてくれません。 計算の材料は揃いますが、いくつにするかを決めるのは人です
  • 置き場の整理はしてくれません。 棚番が決まっていない工場では、データ上は在庫があるのに現物が見つからない状態が続きます

つまり自動化が効くのは、「記録と集計と照合」の部分だけです。前述の3つの手順を先にやっておくほど、システムの効果は大きくなります。

在庫管理の不備が生む「見えない損失」

在庫管理の問題は「現場の使い勝手」の話に矮小化されがちですが、実態は経営に直接効く財務インパクトを持っています。

年間売上3億円・材料費比率40%の中小製造業を想定します。常時在庫が想定より3割多い状態で推移しているとすると、過剰在庫金額は約1,200万円 × 0.3 = 約360万円。これがキャッシュを固定しています。さらに、欠品による緊急発注で材料単価が10%上がる案件が月1件あれば、年間で数十万円から100万円の追加コスト。棚卸ロスで毎年数十万円分の死蔵在庫が発生しているケースも珍しくありません。

見落とされやすいのが仕掛在庫です。材料費だけでなく、投入済みの労務費と外注費も工場の中で固定化しています。この計算方法は中小製造業の仕掛在庫削減で扱っています。

これらは気づかないうちに発生している損失であり、決算書では「在庫」「原価」のひとつの数字に丸められるため、原因が分からないまま放置されがちです。

在庫管理システムの投資額の目安

「いくらかかるのか」が分からないと検討が進みません。中小製造業が選ぶ主な選択肢と、おおよその費用感を整理します。

在庫管理を仕組み化する選択肢と投資額の目安
タイプ 初期費用 月額・保守 案件別原価との連動 向く規模
在庫管理だけの単機能SaaS 0〜10万円 月1〜3万円 なし(別管理になる) 品目管理だけで足りる会社
中小製造業向け生産管理クラウド 20〜50万円 月3〜10万円 あり 20名以下の個別受注
業務パッケージの導入 300万〜1,000万円 年間保守15〜20% 製品による 50名以上
フルスクラッチ開発 1,000万円〜 別途 要件次第 特殊要件がある場合

金額は構成や規模で大きく変わるため、あくまで目安です。判断の軸は単価ではなく「何と繋がるか」です。

在庫管理だけを安く導入すると、案件別の原価には繋がりません。結果として、在庫システムに入力した数字を原価計算用のExcelにもう一度打ち直すことになり、入力の手間が増えて総コストは上がります。 月額が2万円安いことより、二重入力が消えることのほうが効きます。

回収の見方も単純です。先ほどの例で過剰在庫が360万円あるなら、そのうち1割を圧縮するだけで36万円のキャッシュが戻ります。月額3万円なら年36万円なので、1年で回収ラインに乗る計算です。ここで見るべきは在庫金額の削減幅だけではありません。材料探しの工数、緊急発注の割高分、月末の棚卸にかかる残業。会社全体でいくら増減するかで判断してください。 在庫だけを見て「減らせた」と評価すると、欠品で工程が止まった損失が見えなくなります。

在庫管理を成功させる5つのポイント

システム化を進める際に押さえておきたい5つのポイントです。

在庫管理を成功させる5つのポイント
# ポイント 陥りがちな失敗
1 経営課題から逆算する 「在庫管理システムを入れる」が目的化する
2 工番(案件)とのデータ紐づけを最優先 在庫データだけ独立し、原価・採算と分断される
3 現場の入力負荷を最小化 現場が記録を嫌がり、データ品質が崩れる
4 スモールスタートで定着確認 全社一斉導入で大混乱を招く
5 棚卸の差異を改善のトリガーにする 差異を毎月諦めて受け入れてしまう

特に重要なのは 「工番とのデータ紐づけ」 です。在庫システムが単独で動いていると、集めたデータが原価管理・採算管理と切り離され、経営判断には使えません。受注 → 引当 → 発注 → 入庫 → 消費 のすべてを同じ工番で貫通させる設計が鍵になります。

「現場の入力負荷を最小化」も実務上の要点です。複雑な入力を押し付けると形骸化します。タブレットでバーコードを読むだけ、受注登録時に必要材料が自動で引き当たるなど、現場が楽になる方向の機能から先に入れると定着します。

Factory Advanceで実現する在庫管理

Factory Advance は、中小製造業の個別受注・多品種少量生産に特化した生産管理クラウドシステムで、上記の在庫管理を工番ベースで一気通貫に実現します。

  • 受注時に工番を自動発行し、必要材料を自動で在庫引当
  • 在庫水準が発注点を下回った材料を可視化し、発注のタイミングを支援
  • 入出庫処理がシステムに即時反映され、実在庫を把握できる
  • 引当データが工番に紐づき、案件別の材料費が自動集計される
  • 棚卸結果を原価データに反映し、差異分析で改善ポイントを抽出
  • クラウド型のため、初期投資を抑えてスモールスタートが可能

引当・発注点・棚卸といった機能の詳細は在庫管理機能のページにまとめています。

「材料探しに時間が取られる」「決算で在庫金額が予想より大きい」「欠品で生産が止まる」。そんなお悩みをお持ちでしたら、まずは無料の製品紹介資料をご覧ください。在庫管理だけでなく、見積から請求までの一気通貫を含めた生産管理システム導入としてもご検討いただけます。

まとめ

製造業の在庫管理は、数を数える作業ではなく、欠品と余剰の両方を防ぎ、案件別の原価・利益にも繋がる経営活動です。

始め方には順番があります。まず置き場を決めて名前を付ける。次に金額上位2割だけを管理対象にする。入出庫はその場で1行書く。ここまでは紙とExcelで足ります。在庫を触る人が3人を超えたか、品目が500点を超えたか、棚卸差異が3ヶ月続いたか。そのどれかに当てはまった時点が、システム化を考えるタイミングです。

システムを入れるなら、判断の軸は月額の安さではなく、案件別の原価と繋がるかどうかです。在庫だけを安く導入すると二重入力が残り、かえって手間が増えます。

今日からできることが1つあります。直近1ヶ月に使った材料を金額順に並べて、上位2割がどれかを確認してください。 その100点前後に置き場と発注のルールを決めるだけで、欠品の大半は防げます。

参考文献

投稿者プロフィール

尾畠 悠樹
尾畠 悠樹
株式会社イーポート 代表取締役

■ ITコーディネーター
■ キャッシュフローコーチ®
■ JRCA認定ISMS審査員補
■ 東京都中小企業向け
  デジタル技術導入促進ナビゲーター
■ 中小企業庁「みらデジ」デジタル化支援者

兵庫県出身。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーを経て2008年に会社設立。業務用システムの受託開発及び中小製造業向けのパッケージの開発・販売を行う。

よくある質問

システムを入れる前に、在庫管理で何から始めればよいですか?
3つあります。第一に置き場を決めて名前を付けること(棚に番号を振り、材料ごとに定位置を決める)。第二に全品目を数えず、金額上位2割だけを管理対象にすること(品目が500点ある工場でも、金額の8割は上位100点ほどに集中しています)。第三に入出庫をその場で1行書くこと(日次でまとめて記入しようとすると必ず抜けます)。ここまでは紙とペンで足ります。
Excelでの在庫管理は、どこから限界になりますか?
次の3つのどれかに当てはまった時点です。在庫を触る人が3人を超えた、管理対象の品目が500点を超えた、月末の棚卸差異が3ヶ月続けて出ている。ひとつでも当てはまるなら、Excelの更新が現場の動きに追いつかなくなっています。
材料引当を自動化すると、何ができて何ができませんか?
自動化が効くのは「記録と集計と照合」の部分です。受注登録の瞬間に「現状在庫では不足する」が見えるため欠品を早期検知でき、「とりあえず多めに発注しておく」が不要になるので余剰も抑えられます。一方、需要予測はできません(個別受注生産では過去の実績が繰り返されないため前提が成り立ちません)。現物と帳簿のズレも自動では直らず、棚卸は人が数える作業として残ります。発注点や安全在庫の数値そのものを決めることも、置き場の整理もしてくれません。
在庫管理システムの投資額はどれくらいですか?
タイプで大きく変わります。在庫管理だけの単機能SaaSは初期0〜10万円・月1〜3万円、中小製造業向け生産管理クラウドは初期20〜50万円・月3〜10万円、業務パッケージの導入は初期300万〜1,000万円・年間保守15〜20%、フルスクラッチ開発は1,000万円〜が目安です。判断の軸は単価ではなく「何と繋がるか」で、在庫管理だけを安く導入すると案件別の原価に繋がらず、原価計算用のExcelへ打ち直す二重入力が残って総コストは上がります。
在庫管理の不備は、金額にするとどれくらいの損失になりますか?
年間売上3億円・材料費比率40%の会社で、常時在庫が想定より3割多い状態が続いているとすると、過剰在庫は約360万円になり、これがキャッシュを固定しています。加えて欠品による緊急発注で材料単価が10%上がる案件が月1件あれば年間で数十万円から100万円の追加コスト、棚卸ロスで毎年数十万円分の死蔵在庫が発生しているケースも珍しくありません。
在庫データで最も重要な設計は何ですか?
工番(案件番号)との紐づけです。在庫の所在が分からない・案件への引当が属人化する・実在庫と帳簿在庫がズレるという3つの課題は、いずれも「在庫データが工番に紐づいていない」という1点に集約されます。受注→引当→発注→入庫→消費のすべてを同じ工番で貫通させる設計が鍵で、在庫システムが単独で動いていると集めたデータが原価管理・採算管理と切り離され、経営判断には使えません。